企業の将来を左右する「リスクマネジメント」を考え、企業価値の向上へ
目次
※百計オンラインの過去記事(2015/06/21公開)より転載
「リスクマネジメント」とは
企業にとってリスクマネジメントがなぜ必要なのか考える前に、まず「リスクマネジメント」とは、具体的にどういったことを指すのかを確認しておきましょう。リスクマネジメントは、単純な危機管理ではなく、いかに効率よく危険や損失を回避するか、最適解を組織的に考えることです。
そのためには、リスクに対する情報収集や予測、考えられるリスクの分析と評価、対処すべきリスクの優先順位決定、リスク対処時のコストパフォーマンスの分析、最も効率の良い手段でのリスク回避の決定、といった手順を踏まなくてはなりません。そうした手順を正しく身に付け、考えられるリスクに最適解で対応するのが、リスクマネジメントなのです。近年、多くの企業がこのリスクマネジメントの構造を自社企業内に構築することを重要視しています。
「危機管理」と「リスクマネジメント」の違い
単純な「危機管理」と、「リスクマネジメント」の大きな違いは、視点を過去に置くか、未来に置くかという点にあります。危機管理は、多くの場合過去の失敗や損失から反省し、それが二度と起こらないための対策を講じることです。それに対してリスクマネジメントは、この先の未来に起こり得る危険や損失を予測して、それを避けるために、また避けられないならば被害を最小限に抑えるために、対策を講じることです。
過去の失敗だけでなく、未来に起こり得る失敗についても先回りして手を打つことが、リスクマネジメントの大きな役割だと言えるでしょう。もちろん、過去の反省を活かした対策もリスクマネジメントには必要であるため、過去の失敗から生まれた危機管理も、リスクマネジメントの中に含まれます。
なぜ今リスクマネジメントが叫ばれているのか
リスクマネジメントという言葉が日本国内に浸透し始めたのは、2000年代に入ってからです。2006年の会社法施行により、株式会社は「損失の危険の管理に関する体制」を求められるようになり、その前後から多くの企業がリスクマネジメントを意識するようになりました。
そこには、IT革命によってもたらされた高度情報化社会が、それまでとは違う多くのリスクを発生させたことが背景にあると言えるでしょう。顧客や従業員の個人情報の取り扱い、機密セキュリティ問題、内部告発、また不祥事などが発生した場合のインターネット上での拡散など、以前では考えられなかった多様なリスクが発生しています。
また、各種規制緩和が進み、企業間の競争や新規参入が激化していることや、国際化が進み、国内での経済活動とは違う考え方やリスク対処が求められていることなども、原因として挙げられます。
こうした時代の流れを受け、今、リスクマネジメントは企業にとって最重要課題の一つとなっているのです。
リスクの特定と分析・評価
リスクマネジメントの基本は、リスクの特定と分析・評価にあります。まず、リスクの特定ですが、「何が、どのように」起こり得るのかを洗い出す必要があります。この時、個人や特定の部門だけで行うと、予測されるリスクが偏ってしまう危険があります。
そのため、リスクマネジメントは組織的に行われることが重要です。違う部門・分野の人間が集まって、ブレインストーミングなどを行いながらリスクを特定していきましょう。時には第三者の視点も必要です。
また、リスクの種類を、事故や災害などのリスク、訴訟など法務リスク、投機や債権など財務的リスク、雇用環境など労務リスク、政治や社会情勢の影響によるリスク、など細分化して特定する方法も有効です。
リスクの特定の次には、分析と評価が必要です。発生した場合の損害と発生確率を分析し、リスクの大きさを評価していきます。そして、大きさに合わせ、対処すべきリスクの優先順位を決定していきます。
リスクマネジメントの構築は、企業価値向上につながる
企業によって想定されるリスクは異なり、リスクマネジメントの方策も変わってきます。その企業に合ったリスクマネジメントを行うことは、企業の弱点を無くし、価値や強みを伸ばしていくことにつながります。組織の実情に合ったリスクマネジメント体制を構築し、企業価値の向上に役立ててみてください。
著者
株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所
1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。