経営者にいまおすすめの6冊 「交渉術」編

「経営者にいまおすすめの6冊 「交渉術」編」のアイキャッチ画像

目次

政治やビジネスシーンだけでなく、日常生活においても、意見や利害の異なる相手と合意を目指すための「交渉」が日々行われています。互いが納得できる結果を導く「交渉術」は、グローバル化が進み不確実性の高まる時代において、経営者にとって欠かせないスキルの一つといえるでしょう。そこで今回は、交渉の入門書から世界的ベストセラーまで、交渉術を磨くためにおすすめの6冊を紹介します。

『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』

ロジャー・フィッシャー、ウィリアム・ユーリー著/岩瀬大輔訳 三笠書房 1,430円(税込)

『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』

世界で最も信頼される交渉術を知る

本書は交渉術の基本書とされる世界的ロングセラー『ハーバード流交渉術』を、ライフネット生命保険創業者で、自身もハーバード経営大学院卒の岩瀬大輔氏が翻訳したものです。

交渉は、ともすると互いの提示する条件をめぐる「駆け引き」になりがちです。そうなると双方が自分の主張に固執してしまい、本来の利益を損なう結果になりかねません。そんな駆け引き型交渉から脱却し、友好的かつ効率的に優れた合意形成を導き出すために、同大学内に設置されている交渉や紛争解決のための組織「ハーバード大学交渉学研究所」が開発したのが、「原則立脚型交渉」です。

「原則立脚型交渉」とは、①人と問題を切り離す、②「条件や立場」でなく「利益」に注目する、③お互いの利益に配慮した複数の選択肢を考える、④客観的基準に基づく解決にこだわる、という4つの原則で構成されます。本書は、この4原則をどのように実践すべきか、具体的な事例を交えながら解説していきます。

本書のメインともいえる第2章のタイトルで「『相手の心』をコントロールする者が交渉の場を制する!」とあるように、交渉の場において鍵になるのが、「人間の心」にまつわる問題です。

特にビジネスや国同士の交渉の場で忘れられがちなのが、相手が感情や欠点を持った「生身の人間」であるという事実です。そこで、準備段階からフォローアップに至るまで、交渉では常に「人の心の問題をきちんと考えているか」を自問し続けることが大切であると著者は語ります。

人の心が深く関わった問題には、心理学のテクニックが有効です。たとえば、認識にズレがあるのなら、それぞれの真偽を確かめ、正しい認識を共有する。感情的になっているのなら、まず「感情のガス抜き」をする。誤解がありすれ違っているのなら、コミュニケーションを改善する努力をするなど。なお、これらの手法は、相手だけでなく自分自身に対しても働きかけていく必要があります。

第3章では、相手のほうが強い立場であったり、汚い手練手管を使ってくるような「不利な状況」における対処法を紹介します。全体を通して、会話例とその分析も掲載されているので、実践の場でどのように対応すべきかがイメージしやすい構成になっています。

本書の内容は、経営者ならばすでに経験の中で理解しているものかもしれません。しかし、あらかじめ持っている一般常識や経験則を、実用的な枠組みの知識として再構築することで、自身の交渉力をより磨くことができるだろう、と著者は最後に締めくくっています。

『戦略的交渉入門』

田村次朗、隅田浩司 著 日本経済新聞出版 946円(税込) 

『戦略的交渉入門』

日本人も実践しやすい交渉術を網羅した1冊

1冊目で紹介した『ハーバード流交渉術』を、日本人が実践しやすいように発展させたのが本書です。交渉学の一般的な方法論に加え、社会心理学と近しい領域の研究成果、事前準備や交渉の進め方、戦術的なテクニックなどが網羅的にまとめられています。

本書における「交渉」とは、誰かが得をして誰かが損をするといった「ゼロサムゲーム」ではなく、互いの利益が最大限反映された「賢明な合意」を目指すものであると定義されています。

はじめに語られるのは、「交渉はストレスである」ということです。交渉前には誰しも不安になりますし、交渉のようなコミュニケーション下において、人間の集中力や忍耐力は低下します。交渉学は、そんな状況下でも消耗せず、大事なところで集中力を発揮するための手法を生み出そうとしているのです。

そのために重要なのは、事前の準備です。準備にはさまざまなやり方がありますが、本書で最も効率的かつ効果的としているのが、「ファイブ・ステップ・アプローチ」と呼ばれる手法です。

このポイントは、①自分や交渉相手の状況を把握すること、②最終的にどんな問題を解決したいのかというミッションを決めておくこと、③自分の強みを棚おろししておくこと、④協議事項や金額などの条件、譲歩できる最低ラインなどをターゲティングしておくこと、⑤合意できない場合の最も望ましい代替案(BATNAーBest Alternative to Negotiated Agreement)を用意しておくこと、の5つです。なお、たとえこの5つが完璧にできなくても、どれか1つでも準備することで、交渉をより円滑に進めることができると著者は補足しています。

さらに、日本人が陥りがちなわなと、その対応策も提示します。たとえばビジネス交渉においては、事前に社内調整が必要となるケースがあります。そこでは、1対1形式の交渉よりも、組織内全体のコミュニケーションにおける交渉のほうが難航しがちです。これは、集団の中で同調圧力や認識のゆがみなどが起こり判断能力が損なわれ、愚かな意思決定をしてしまうという「集団的浅慮」に起因します。本書では、このような事態を回避するためのテクニックも紹介されています。

日本人は「多くを語らず、態度で示すこと」が美徳とされる傾向がありますが、交渉学は「品格のある対話力を身につけるための教養の一つ」だと著者は述べています。交渉学を体系的に学ぶことは、日ごろのビジネスコミュニケーションにも大いに役に立つでしょう。

『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本――7つのストーリーで学ぶ世界標準のスキル』

グロービス著 ダイヤモンド社 1,760円(税込) 

『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本 −−7つのストーリーで学ぶ世界標準のスキル』

人気ビジネススクールが教えるわかりやすい交渉術

本書は日本最大規模のビジネススクールを運営するグロービスによって執筆された「交渉」の入門書です。ビジネスパーソンが知っておくべき交渉の基本概念や知識が、広範囲にわたって紹介されています。

「何のための交渉か」と題された序章では、互いのパイを奪い合うような「価値分配型交渉」ではなく、双方が得られる価値の合計を最大化ための「価値創造型交渉」を目指すべきであると提示します。さらに、優れた交渉者に見える共通点から、交渉に挑む際に重要なポイントとして、①積極的に準備をする、②目標を高く設定する、③相手の話に耳を傾ける、④誠実である、の4点を挙げています。

第1章では、交渉を理解するための基本的な概念を紹介しています。前述のBATNAや、交渉が妥結する可能性のある条件範囲を示すZOPA(Zone of Possible Agreement)といった、交渉における用語の定義が整理されます。

続く第2章では「価値創造型交渉」の考え方を、第3章では合意を実現する際に難所となる情報の非対称性や認知バイアス、倫理的バイアスなどの障害と、それらの具体的な克服方法を解説します。そして最終章では、交渉の準備から実行に至るまでの実際の流れや、相手が交渉戦術を仕掛けてきたときの防御法などが述べられています。

本書の特徴は、各章においてビジネスシーンで実際に起こりそうな7つのケーススタディが添えられていることです。たとえば、商業ビルのテナントを退去したいといい出した喫茶店オーナーに対して、どのような交渉を行えば撤退意思を覆すことができるのか。ECサイトの制作を受託した会社が、クライアントからの度重なる仕様変更の注文にどう対応するかーなど。ビジネスパーソンにとってリアリティのあるストーリーを通じて、交渉スキルの重要性と、その実践法が理解できます。

また、平易な文章とともに基本の概念や用語の解説には図表が用いられており、交渉術を初めて学ぶ人にもわかりやすい内容になっています。交渉術の全体像を復習したい人にとっても、有益な1冊といえるでしょう。さらに理解を深めたい場合は、本書の巻末にある参考文献リストの書籍で学ぶことが推奨されています。

『本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」』

ロジャー・ドーソン著/小山竜央監訳/島藤真澄訳 KADOKAWA 2,420円(税込)  

『本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」』

交渉成功の鍵は「相手に勝ったと思わせること」。全米ベストセラーとなり世界中で翻訳され、25年以上読み継がれている交渉術の伝説的名著。わずかな所持金を持って米国を訪れ、ビジネスを成功させたたたき上げの経営者である著者による交渉の極意を、豊富な事例とユーモアを交えながら解説する。

『武器としての交渉思考』

瀧本哲史著 星海社 946円(税込)

『武器としての交渉思考』

著者が京都大学で教えていた「交渉の授業」をまとめたもの。交渉は今世の中を動かすための必須スキルと捉え、その思考法を多角的に解説。交渉の基礎知識や具体的事例とともにいくつかの例題が用意されており、実際に考えながら交渉術を学ぶことができる。若者向けに語り掛けられているが、幅広い世代にとって多くの気づきが得られる1冊。

『説得の戦略 交渉心理学入門』

荘司 雅彦著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 1,100円(税込)

『説得の戦略 交渉心理学入門』

心理学や行動経済学などのエビデンスに基づいて、人を納得させるためのノウハウがつまった実用書。プレゼンや交渉などの場において重要な「話の内容以外」の要素や、誤解や衝突が生まれる理論や対処法なども解説。各パートにポイントと根拠がまとめられており、そこに目を通すだけでもおおまかな交渉術の内容が把握できる。

[編集] 一般社団法人100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]東洋経済新報社ブランドスタジオ

経営戦略から不動産マーケット展望まで 各分野の第一人者を招いたセミナーを開催中!

ボルテックス グループサイト

ボルテックス
東京オフィス検索
駐マップ
Vターンシップ
VRサポート
ボルテックス投資顧問
ボルテックスデジタル

登録料・年会費無料!経営に役立つ情報を配信
100年企業戦略
メンバーズ