経営者にいまおすすめの6冊 「地政学」編

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目次

昨今は「地政学」が大いに注目されています。一方で、その理論はあらゆる事象にまたがり、非常に拡散的なテーマであるため、学問として体系的に捉えることが難しいともいわれます。そこで、今回はそうした地政学というテーマをさまざまな視点で網羅した、おすすめの6冊を紹介します。

『地政学入門 改版—外交戦略の政治学』

曽村保信 著 中央公論新社 814円(税込)

地政学の土台をつくり上げた3人を軸に、学びを深める

国際政治学者である故・曽村保信氏(1924〜2006年)が、1984年に執筆したのがこの書籍です。各章では地政学を最初期に唱えた3人の人物にスポットを当て、有史以来の文明の進化過程を振り返りつつ、各人の研究を紹介しています。そのため、地政学の基礎と主幹を総括的に学ぶことができます。

第一章では、地政学の創始者とされる人物、イギリスのハルフォード・マッキンダー(1861〜1947年)を紹介。マッキンダーは、ユーラシア大陸の内陸部、主にウラル以西の中東を「ハートランド」と呼称し、ここを制するものが世界を制するのだと定義しました。「ランド・パワー」の優位性を唱えたのには理由があり、第1次大戦後に勢力を伸ばしはじめるドイツやロシアが、海洋国家イギリスの脅威になりつつあったことによるものです。そもそも西欧の文明は、内陸アジアからの圧力によって発展したという考察もあり、ハートランドの重要性をより印象づけていると説きます。

続く第二章では、ドイツの陸軍軍人であり地政学者のカール・ハウスホーファー(1869〜1946年)についてです。第1次大戦以前に駐日武官に着任し、ハウスホーファーが日本について著した『太平洋地政学』は、当時の日本でも大いに注目されました。その後はランド・パワーを重視したドイツの地政学を大成し、その創始者と認められます。しかし、1941年に独ソ戦がはじまると、地政学上の見地からソ連との関係強化を主張。主にこれを契機として当時主権を握っていたヒトラーとの関係が疎遠になり、ややつらい状況に置かれ、悲痛な最期を遂げます。

そして第三章は、アメリカ海軍軍人であり地政学者のアルフレッド・マハン(1840〜1914年)が登場。北南米大陸に対する欧州からの干渉を排除するとともに、アメリカはヨーロッパの内政に関与しないというモンロー主義をベースに、軍事力による防衛的側面からアメリカの「シー・パワー」理論を構築。国土統一が完了する以前のアメリカの発展に寄与したとされています。

シー・パワーに頼る海洋勢力と、ユーラシアとアフリカからなる旧大陸、そして北南米の新大陸。その国際バランスを決定づける時代に生きたこの3人を軸に、曽村氏が長く広範な歴史を大局的に解説しています。

『戦争の地政学』

篠田英朗 著 講談社 990円(税込)

戦争や紛争のベースにある各国の地政学理論の違いに注目

本書は、早稲田大学とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で国際関係学の研究を続けた篠田英朗氏によって執筆されました。著者は約500年間にわたる国際紛争を解説しながら、地政学とは何か、という根本的な問いを明らかにすべく書き進めています。

この本の第1部では、「地政学とは何か」をテーマに、その学派を「英米系地政学」と「大陸系地政学」に大別することからはじまります。そこでは20世紀初頭の国際情勢をもとに地政学を説いたイギリスのマッキンダーと、ドイツの軍人であるハウスホーファーの主張が紹介されていますが、その後、アメリカに地政学を導入し、英米系地政学を引き継いだアメリカのニコラス・スパイクマン(1893〜1943年)や、それと対照的に大陸系地政学の観点に立つドイツのカール・シュミット(1888 〜1985年)の理論も検証され、両派の世界観が対立していることを明らかにします。

第2部では、地政学がヨーロッパの国際情勢にどのような影響を与えたのかを解説。英米系地政学と大陸系地政学の違いが、米ソ冷戦やウクライナ戦争に大きく影響をおよぼしたとして、検証しています。冷戦そのものは、英米系地政学の考えであるイギリスとアメリカによるシー・パワー連合が、大陸系地政学を主張するソ連のランド・パワーを封じ込め、終結したとされています。しかし、著者は「生存圏」を拡張するロシアはプーチン政権のもと、ユーラシアにおける広域政治共同体の正当性をあらためて主張しているとして、注視しています。

また、日本の歴史において地政学の視点はどのように扱われてきたのか。この点を第3部で語っています。ここで著者は、日本が第2次大戦以前は英米系地政学の影響を受け、戦中は大陸系地政学の影響を強く受けたといいます。そして戦後はアメリカのスパイクマンによるシー・パワー理論に最も影響され、それをベースとした安全保障条約に組み入れられたとしています。

こうして大局的に世界を俯瞰した読者は、現代世界の各紛争が、どのような世界観から生じているのかを、第4部で総括的に知ることになります。

『グローバル・バリューチェーンの地政学』

猪俣哲史 著 日経経済新聞出版 2,640円(税込)

切っても切れない、世界経済と地政学の関係性に注目

GVC(グローバル・バリューチェーン)とは、複数の国にまたがって生産される財やサービスにおける付加価値の連鎖を意味します。現代の経済社会においてこの世界的な価値ネットワークは非常に複雑に連携していますが、GVCと各国の安全保障の関係を、地政学の視点から読み解くのが当書です。筆者は猪俣哲史氏。ロンドン大学政治学部、オックスフォードの大学院に学んだ著者が、複雑なネットワークや理論を平易な言葉で解説しています。

地理学や国際関係論などに属する地政学と、経済観念であるGVCは、一見すると次元の違う話題に思えます。しかし、国同士の経済的な相互依存が深化している今、GVCは国家間のパワーバランスを左右する「武器」にさえなっています。こうした情勢をベースにした猪俣氏のGVC分析は、最新の世界経済地図を読者に提示してくれます。

第1章では、国際経済ネットワークの形と国家間のパワーバランスを明らかにするために、ネットワークの中心的役割を果たすハブに関して言及しています。経済制裁の手段としても利用された国際銀行間の金融ネットワークSWIFTや、半導体の禁輸措置などを例題に解説されています。

第2章では、そうしたパワーバランスに影響をおよぼす要所(チョークポイント)を明確にするため、国際産業関連表という統計表を用いてネットワークの中心を探り、世界各所で生み出される付加価値が、どのように国家間を移動するか、その行程を描いています。

続く第3章では、急速に発展した中国経済を分析。GVCこそが中国経済を極限まで加速させた触媒であることが示唆され、さらに第4章では米中デカップリングに焦点を当て、両国の政策手段、アプローチ、リスクやコストなどを比較しながら、国際ビジネス環境への影響を調査します。そして第5章の国際関係論における安全保障のジレンマ、第6章の政策提言へと続きます。

目に見える地理的要因だけでなく、高度に連携した世界のコミュニケーションを主題にしているという点において、当書は地政学の新たな可能性を提示しているといえます。

『20歳の自分に教えたい地政学のきほん』

池上彰+「池上彰のニュースそうだったのか!!」スタッフ 著
SBクリエイティブ 990円(税込)

池上彰氏が地政学をやさしく紹介。世界の国々の成り立ちや思惑を地理学と政治学の両面から解説。各国の政治的判断が地理的条件に左右されてきた歴史を理解できる一冊です。

『教養としての「地政学」入門』

出口治明 著 日経BP 1,980円(税込)

地政学とは「弱者の生きのびる知恵」であると語る、元・立命館アジア太平洋大学の学長である出口治明氏。シュメール人、海上交通路、ナチスなど、歴史的な出来事を交えながら地政学を解説します。

『13歳からの地政学: カイゾクとの地球儀航海』

田中孝幸 著 東洋経済新報社 1,650円(税込)

高校生・中学生の兄妹と年齢不詳の男「カイゾク」との会話を通じ、ストーリー仕立てで地政学を楽しく学習。世界で起こっている出来事の本質や背景をわかりやすく解説します。

[編集] 一般社団法人100年企業戦略研究所
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