TOKYO街COLORS VORTのある街-上野編-

北の玄関口「JR上野駅」

文化芸術施設や史跡が台地の上に点在する山手と、江戸の活気を今に伝える下町が共存する上野。かつて東京の「北の玄関口」としても栄えた街は、その特長を生かした街づくりが進められています。400 年の歴史に思いをはせながら、上野の街を歩いてみましょう。

近代の文化を牽引してきた初めて尽くしの上野の山

かつて北関東や東北に向かう列車が発着し、東京の「北の玄関口」と称された台東区・上野。「日本初」が多い上野エリア発展の歴史は、「上野の山」と呼ばれる台地に構えた「東叡山寛永寺」から始まりました。

寛永寺は徳川家康、秀忠、家光の3代の将軍が帰依した僧・天海が、1625(寛永2)年に建立した徳川家の菩提所です。天海が「庶民も広く参拝できるように」と境内に吉野の桜を植樹したことで、江戸随一の桜の名所として栄えました。最盛期には上野の山を中心に30万坪超の広大な寺域を誇りましたが、幕末の戊辰戦争で堂塔を焼失。土地を没収した明治政府は上野の山を日本初の公園の一つ「上野恩賜公園」に指定します。園内には日本初の博物館である「東京国立博物館」をはじめ、「国立科学博物館」や「国立西洋美術館」といった6つの美術館・博物館に、「東京文化会館」などのホールが次々に建てられました。1882(明治15)年には日本初の動物園「恩賜上野動物園」も開園しています。

台地に「国立科学博物館」など文化芸術施設が集まる

寛永寺も政府から復興が許され、現在は上野の山の北側に伽藍を広げています。山内には「旧寛永寺五重塔」や「清水観音堂」などの重要文化財も点在。また「不忍池」に浮かぶように立つ「不忍池辯天堂」は昭和の再建ですが、夏になると早朝には蓮の花が池を彩り、その幻想的な景色は江戸時代の浮世絵にも描かれました。そして、春にはソメイヨシノなど約800本の桜が咲き誇ります。日本有数の文化エリアとなった上野の山には、今も多くの人が散策に訪れています。2021年6月には動物園で双子のパンダも誕生。さらににぎわいを増しそうです。

上野の山に隣接して上野駅が開業したのは1883(明治16)年のこと。上野と埼玉の熊谷を結ぶ日本初の私鉄・日本鉄道の始発駅でした。やがて日本鉄道は国有化されて、路線はさらに延び、昭和に入ると東京メトロや京成電鉄も開業。高度経済成長期には、集団就職の学生が上野駅に降り立ち、北の玄関口と呼ばれるようになりました。
その後、東北新幹線が東京駅まで乗り入れ、2015年には東北本線(宇都宮線)・高崎線・常磐線と東海道本線の相互乗り入れが始まり、ターミナル駅としての役目を終えました。しかし、その利便性はますます高まり、1日にJRが約18万人、東京メトロで約21万人(2019年)が乗降する都内有数の駅となっています。

江戸の活気を今に受け継ぐ下町の商業エリア

JR上野駅中央改札から出ると、上野の山とは一転して、大型商業施設や大手家電量販店、飲食店などが立ち並ぶにぎやかな商業地が広がっています。東京メトロ銀座線と都営地下鉄大江戸線が通る上野広小路エリアは、寛永寺の門前町として繁栄しました。その地下鉄駅の上に立つ「松坂屋上野店」は1768(明和5)年の創業です。ほかにも、焼き菓子のゴーフルが有名な「上野風月堂」や、森鴎外、谷崎潤一郎といった文化人に愛された「鰻割烹 伊豆榮」、東京最古の薬店「守田治兵衛商店」など、江戸期創業の老舗が点在します。また、東京メトロ稲荷町駅近くにある「下谷神社」は寄席発祥の地であり、東京最古の寄席「鈴本演芸場」は1857(安政4)年の開場です。開演前に打ち鳴らす太鼓の音が、往時の活気を今に伝えているかのようです。

一方、現代の上野のにぎわいを象徴するのは「アメヤ横丁」、通称「アメ横」でしょう。戦後の闇市に端を発した「アメ横」は、JR上野駅から御徒町駅までの高架線下とその西側にある商店街。食料品や衣料品、装飾品など約400以上の店が軒を連ねています、特に、例年50万人以上が訪れるという年末の繁盛ぶりは風物詩といわれるほどで、威勢のいいかけ声につい買い過ぎてしまいそうになります。コロナ禍以前は多くの外国人客でにぎわった、インバウンドでも人気のスポットです。また、JR御徒町駅の東側には約400軒の貴金属・宝石の問屋が集まり、日本有数の「ジュエリータウンおかちまち」を形成しています。

江戸以来の名所「不忍池」、観光客でにぎわう「アメ横」、超高層複合施設「上野フロンティアタワー」

文化芸術の拠点と町人文化を生かした街づくりを

江戸の情緒をあちらこちらに残す上野エリアにも、再開発の新しい風が吹き込んでいます。上野の山に寄り添うように立つのが「上野の森さくらテラス」です。昭和・平成と親しまれてきた上野松竹デパートの跡地に2014年に開業した飲食総合ビルで、3階は上野恩賜公園に直結しています。また、同じく公園に直結するJR「上野駅公園口」は2020年にリニューアル。新しい駅舎には公園を望む展望テラスが設けられ、散策の際の休憩スポットになっています。

超高層ビルも相次いで竣工しました。昭和通り沿いに2015年に開業した「上野イーストタワー」は、オフィスとホテルからなる地上25階地下1階建ての複合ビル。松坂屋の南館の跡地には、2017年に地上23階地下2階建ての複合施設「上野フロンティアタワー」がオープンしています。低層階にはパルコの大人向けラインである「パルコヤ」や「TOHOシネマズ」、高層階にはオフィスが入っています。松坂屋と合わせた周辺エリアは「シタマチ.フロント」と命名され、地域活性化を目的とした新しいランドマークとして話題となっています。さらに、2019年には地上36階地下1階建ての「ブリリアタワー上野池之端」が竣工しました。不忍池と東京大学の間に立つロケーションが人気の超高層マンションです。

こうした再開発によってさらなる魅力が加わった上野エリア。台東区では街の特長を生かしながらの長期的な街づくりも進められています。代表的なのは台東区役所や上野警察署・消防署がある東上野4丁目・5丁目地区です。2015年に策定された「東上野四・五丁目地区まちづくりガイドライン」を基に地区計画を策定。旧下谷小学校跡地の活用や道路の拡幅が計画されています。江戸の町人文化を残し、近代日本の文化芸術を牽引してきた上野エリアが今後どう進化していくのか、その新たな歴史を「VORT」から眺めてみるのもいいですね。

[編集]株式会社ボルテックス ブランドマネジメント課
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