金投資による資産形成~基本知識とメリット・デメリット

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記事公開日:2018/09/14  最終更新日:2024/07/02

※百計オンラインの過去記事(2018/09/14公開)をアップデート

インフレーションによる貨幣価値の下落や、政府がすすめる「貯蓄から投資へ」のシフトなど、貨幣に対する信用が危ぶまれる中で、資産形成の一つとして古くから厚い信頼を寄せられている投資先があります。それが「金」です。なぜ金投資は今なお多くの人々を惹きつけているのでしょうか。その理由を、金投資ならではの特徴やメリットについてご紹介していきます。

金投資の基本的な知識

金の価値と投資方法

金は古来よりその希少性と美しさから、世界共通の資産として扱われ、その普遍的な価値は多くの国や文化で一貫して認められてきました。その歴史は紀元前に遡り、通貨として流通していた実績を持ちます。また、1970年代までは金本位制が取られ、世界各国の紙幣も金と結びつく形で価値が決まっていたのです。この普遍性は、金が腐敗せず、特定の量で常に一定の価値を保持するという、金自体の物理的な特性によるものであり、国や通貨の境界を越えて流通することが可能です。

金への投資は、その種類や形態によりさまざまな方法で行われます。最も一般的な方法は、物理的な金、つまり金塊や金貨を直接購入することです。これらは通常、金貨商や貴金属取引所で購入できます。物理的な金は手元に保管することもできますが、保管場所や保険などのコストを考慮する必要があります。

また、金関連の金融商品を通じて金への投資を行うことも可能です。具体的には、金の価格に連動する上場投資信託(ETF)や、金鉱山企業の株式などがあります。これらの金融商品は証券取引所で取引され、金と直接取引するよりも取引が容易で、保管や保険の心配をする必要がありません。

これらの方法を通じて、投資家は自身の投資目標やリスク許容度に応じて、最も適した金投資を選択することができます。金投資は、資産の多様化を図るための一つの手段となり、市場の不確実性に対する保険としての役割も果たします。

金の流動性

金は非常に高い流動性を持つ資産です。流動性とは、資産を現金に換える能力、つまり売買の容易さを指す重要な指標です。金は世界中で普遍的に価値が認められており、どの国でも市場が存在しています。これにより、金は必要に応じていつでも売買することが可能で、緊急時には資金を迅速に回収することができます。

金の需要と供給

金の価格は基本的に需要と供給によって決まります。このバランスは、さまざまな要素によって影響を受けます。

まず、金の供給についてです。金の供給源は主に金鉱山からの新規生産と、既存の金の再利用(リサイクル)からなります。金鉱山からの供給は、新規の鉱脈の発見や採掘技術、採掘コスト、環境規制などによって影響を受けます。一方、リサイクルされる金の量は、金の市場価格や経済状況によって変動します。

次に、金の需要についてです。金の需要は主に投資、宝飾品、工業用途、中央銀行の保有によるものです。投資家は、不確実性やインフレリスクから資産を保護するために金を求めます。宝飾品としての需要は、特にインドや中国などの新興市場で強く、文化的な要素も大きく影響します。工業用途では、電子機器や医療技術などで金が使用されます。また、中央銀行も通貨の安定のために金を保有します。 これらの需要と供給のバランスが、金の市場価格を決定します。しかし、金の価格は需給バランスだけなく、金利や通貨の価値、地政学的な緊張など、より広範な経済的な要因にも影響を受けます。

金投資のメリット

世界共通の資産である金の安定性

金は今でも世界中の中央銀行で準備資産として保有されています。万が一国が破産し、紙幣が単なる紙切れになってしまう時が来ても、金の価値そのものがなくなることはありません。これは金投資の基本にして最大のメリットといえるでしょう。国内にいると感じにくいかもしれませんが、現代でも急激な景気の変化やテロや戦争などによる世界情勢の不安定さは否めません。世界情勢が不安定になればなるほど、金の強さはその輝きをより増していくのです。

このような情勢の変化に強く、金そのものに価値があるという特性から、金は守りの資産として運用していくことに向いています。紙幣をいくら貯め込んでいても、国の情勢が傾けばその価値は一気に下がってしまいます。しかし金であれば、そのような状況になっても価値を失うことがありません。その効果を最も発揮するのは、10年、20年といった長期的な視点で投資を考えた場合です。そういう意味では、投資と聞いてイメージするような、ハイリスクハイリターンな収益を期待するタイプのものではなく、むしろ今持っている資産をいかにして保存しておくか、そういったことを考えた際に利用していきたい投資方法となるでしょう。

インフレヘッジとしても有効な金

金は誰もが知っているように、地球が作り出した鉱物であり、埋蔵量に限りがあるものです。だからこそ、その価値は無くなることがなく、場合によっては今後さらに上がっていくことすらも十分に考えられるのです。また、先進国であれ発展途上国であれ、その国の力とは関係なく、金の価値は常に世界共通であることも強みの一つといえるでしょう。こうした政治・経済の不安定にも影響されないというのは大きなメリットであり、金そのものに価値があるからこそ、価格が急落する可能性が少ないのです。さらに、インフレヘッジとしての役割も持っています。つまり、インフレによる購買力の低下が進むと、一般的には金の価格が上昇する傾向にあり、そのため資産価値を守る役割を果たします。また、不動産や株式といったものとは違い、トロイオンス単位での売買となるため、小分けに投資ができるというのも金投資の安全性を高めている要因といえるでしょう。

リスク分散としての金

金は他の資産との相関が低いため、投資ポートフォリオにおける重要なリスク分散ツールとなります。具体的には、金と他の主要な投資クラス(株式、債券など)との価格動向が必ずしも一致しないため、一部の投資が損失を出した場合でも、金が価格を維持または増加させる可能性があります。

これは、市場が不安定な時期、特に金融危機や経済緊急事態の際に顕著となります。これらの期間中、投資家は通常、リスクの高い資産から安全と見なされる資産へと資金を移動します。この「安全な避難先」の一つとしてよくあげられるのが金です。その結果、株式市場が下落するときには、金の価格が上昇する傾向があります。

加えて、金は物理的な資産であり、その価値は生産コストや市場の需給バランスによって支えられています。これは、金がインフレや通貨の価値下落から投資家を保護する一因ともなっています。

しかし、金投資も無リスクではありません。金の価格は変動し、投資が損失をもたらす可能性があります。そのため、金を含む投資ポートフォリオは、個々の投資目標、リスク許容度、投資期間に適したものでなければなりません。

特殊な金取引

金投資に関しては、一般的なインゴットとして所有する以外に、アクセサリーや工芸品として所有をしたり、コインとして所有したりするケースがあります。中でもコインに関しては、その時々の社会的なイベントなどによる限定金貨などが製造され、それがコレクター的な価値を生み出しているものもあります。そうした場合、金本来の価値はもちろんですが、そこにプレミアとしての価値が上乗せされるため、通常の価値よりも高い金額で取引されるケースもあるのです。金投資を考える際は、こうしたプラスアルファの価値を狙ってみるのもありでしょう。仮にプレミア価値が付かなかったとしても、金そのものの価値があるのでデメリットは少ないのではないでしょうか。

金投資のデメリット

収益の不確定性

金投資はその特性上、収益の不確定性があります。金は配当や利息を生み出さない投資商品であり、その価値は市場の需給バランスや経済情勢など多数の要素によって決定されます。その結果、金の価格は大きく変動することがあります。

この変動性は、金投資の収益を不確定なものにしています。具体的には、金を購入した後、その価値が上昇しない限り、投資家は利益を得ることができません。また、金の価格が下落した場合、投資家は損失を被る可能性があります。

さらに、金の価格予測は非常に難しいとされています。金の価格は、経済の成長率、インフレ率、金利の動向、地政学的なリスクなど、多くのマクロ経済的な要因に影響を受けます。これらの要因は予測が難しく、時には予想外の動きをすることもあります。そのため、これらの要素を正確に予測し、それに基づいて金の価格動向を予想することは容易ではありません。

費用や手数料がかかる

金を物理的に保管する場合、その保管場所のレンタル料やセキュリティシステムの設置費用、保険料などがかかります。これらは金を保有し続けるための必要経費であり、金自体の価値が上下することに関わらず発生します。しかも、一度払ったら終わりではなく、定期的に発生するため、長期的に見ればかなりのコストとなります。

また、金投資信託やETF(上場投資信託)、純金積立を利用する場合も、管理費や手数料が必要です。これらの費用は、投資を通じて得られるリターンを圧迫する可能性があります。

これらの費用を適切に理解し、投資の回収期間やリターンを考慮することは重要です。それによって、投資が期待通りのリターンをもたらす可能性があるのか、それとも費用が利益を上回ってしまうのかを見極めることができます。また、それぞれの投資手段の費用を比較することで、最もコストパフォーマンスがよい投資手段を選択することも可能になります。

紛失、盗難リスク

金は物理的な資産であるため、紛失や盗難のリスクが常に存在します。金の紛失は、投資を一瞬で無価値にする可能性があります。これは他の非物理的な投資、例えば株や債券とは異なります。また、金はその価値と小さなサイズから、盗難のリスクも非常に高いです。

さらに、金を安全に保管するためには、安全な場所や金庫が必要となります。これは追加のコストを発生させ、投資の収益性を低下させる可能性があります。また、保管場所が限られている場合、大量の金を保管することは困難であるといえます。

これらのリスクを軽減するためには、金投資を行う際には十分な保管設備と保険を検討することが重要です。

金価格の動向

金投資に関しては、一般的なインゴットとして所有する以外に、アクセサリーや工芸品として所有をしたり、コインとして所有したりするケースがあります。中でもコインに関しては、その時々の社会的なイベントなどによる限定金貨などが製造され、それがコレクター的な価値を生み出しているものもあります。そうした場合、金本来の価値はもちろんですが、そこにプレミアとしての価値が上乗せされるため、通常の価値よりも高い金額で取引されるケースもあるのです。金投資を考える際は、こうしたプラスアルファの価値を狙ってみるのもありでしょう。仮にプレミア価値が付かなかったとしても、金そのものの価値があるのでデメリットは少ないのではないでしょうか。

金投資を活用し、安心を獲得しよう

市場の分析

金市場は通常、インフレーションや通貨の価値変動、経済不安などのマクロ経済の影響を強く受けます。金は「セーフ・ヘイブン(安全な避難所)」とも呼ばれ、金融市場が不安定な時期にはその価値が上昇する傾向にあります。

金価格は通貨の価値と密接に関連しています。伝統的に、アメリカドルと金価格は逆相関の関係にあるとされています。つまり、アメリカドルが弱化すると金価格が上昇し、アメリカドルが強化すると金価格が下落する傾向にあります。

金市場の分析には、これらの要素を考慮することが必要です。また、金価格はさまざまな要素に影響を受けるため、投資家は常に市場の動向を注視し、自身の投資戦略を調整する必要があります。

金価格の史上最高値

金の価値は、その希少性、美しさ、そして金融市場における安定した投資対象としての地位から来ています。2024年4月22日、金の価格は小売市場で1グラムあたり1万3,105円となり、これは史上最高値を記録した瞬間でした。

この高騰は、過去20年間にわたる金価格のトレンドを見ても明らかです。2004年4月には、金の小売価格は1グラムあたりわずか1,500円程度でした。しかし、その後の10年間で価格は上昇し、2014年4月には1グラムあたり4,600円となりました。そして、その後の10年でさらに価格はほぼ3倍に跳ね上がり、2024年には1グラムあたり1万3,105円となりました。

これらの数字から、金の価格は過去20年間で10年ごとにおおよそ3倍ずつ上昇していることがわかります。この急激な価格上昇は、コロナ禍やロシアのウクライナへの侵攻、世界経済の不安定性や金への投資需要の増加など、さまざまな要因によるものと考えられます。金は通貨の価値が下落する時代においては特に、安全な投資対象としての役割を果たします。

つまり、金の価格上昇は、世界経済の変動や金への投資の動向を示すバロメーターともいえます。その価格は、経済環境や投資者の感情、さらには国際的な政治情勢まで反映しています。このように、金の価格は単なる数値以上の意味を持ち、経済全体の動きを読み解く一つの鍵となり得るのです。

金投資と資産形成

金投資は、その普遍的な価値と希少性から、資産形成における重要な手段となります。金は通貨や株式など他の資産と相関が低く、経済環境の変動に対する一種の保険として機能します。

金はインフレーションや経済不安から保護するヘッジとしての役割を果たし、その価値が時間とともに一貫性を保つ傾向があります。特に、経済が不安定な時期やインフレーションが高まる時期には、その価値がさらに高まることがあります。この特性は、他の資産が不調な時に投資家の資産を保護するための安全な避難先となり得ます。

また、金投資は資産の多様化を助け、リスクを分散させ、ポートフォリオ全体の安定性を高めます。さらに、金は持続的な資産増加の可能性を提供し、歴史的に見て、金の価格は長期的に上昇傾向にあります。

しかし、金投資にもリスクがあり、金価格は市場の需給バランスや経済環境に影響を受け、価格変動が起こります。したがって、金投資を行う際には、市場の動向を理解し、自身の投資目標とリスク許容度に基づいた適切な投資戦略を立てることが重要です。 総じて、金投資はその特性と長期的な価値保持能力から、資産形成における重要な手段となります。リスク分散と保全性を兼ね備えた金投資は、しっかりとした投資戦略と共に、安全な資産形成へと導くでしょう。これらの観点から、手持ちの資産をどのように保管し、価値を維持していくのか考える際の選択肢として、金という手段も検討してみてはいかがでしょうか。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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