ウォーレン・バフェットの投資哲学。資産を「727万倍」に殖やした投資の神様

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※百計オンラインの過去記事(2015/08/16公開)より転載

ウォーレン・バフェット。株式投資をなりわいにする人であれば知らない人はいないでしょう。1930年アメリカ・ネブラスカ州生まれで、経済誌「フォーブス」の2015年世界長者番付で、第3位に入る大富豪にして「オマハの賢人」「投資の神様」ともいわれる著名な投資家です。5月に開催された、バフェットが会長兼CEOを務める投資持株会社バークシャー・ハサウェイ(以下「バ社」)の株主総会には4万人が詰めかけ、「賢人」「神様」が発する投資や経営にまつわる数々の金言に耳を傾けました。

727億ドルといわれるバフェットの資産のほとんどは、最大株主となっているバ社の株式です。バフェットが学生時代にコツコツためた1万ドルを元手と考えるなら、727万倍という途方もない数字です。奇しくもバフェットについて書かれた伝記のタイトルは「THE SNOWBALL」。雪ダルマ式にふくれ上がった資産を象徴するにふさわしい書名といえます。

バフェットの投資哲学はいわゆる「バリュー株投資」「成長株投資」が基本です。多くの情報を集めた上で企業本来の価値と比較して株価が低水準にあり、中長期的に成長が見込まれる企業が選ばれています。元々は繊維会社だったバ社も典型的なバリュー株投資先の一つです。バ社の資産内容と比較した株価が極端に安値だったことから、1960年代半ばに株を買い集めて経営の支配権を握ったのです。

一方で不確定要素が大きく業績の変動が極端になりがちなベンチャー企業は敬遠されます。「何をしているのかよく分からない」企業は投資対象にならないということです。それよりは長年安定成長を続けてきた、消費者に身近な商品やサービスを提供する企業の方が安心して投資対象に選ぶことができます。バフェットの好みは、市場で独占的あるいは優位に立つ事業を持つ企業や高いブランド力を持つ企業です。

例えばバ社の保有銘柄であればIBM、コカ・コーラ、P&G、アメリカン・エキスプレス、ウォルマートなどは、社名を聞けば事業内容や商品、市場での優位性が容易に思い浮かぶでしょう。またバ社の最大投資先となるウェルズ・ファーゴは、日本での知名度は低いが個人向けローンでは米国内トップクラスの優良銀行です。

そして短期の値上がり・値下がりに惑わされず中長期にわたる保有で企業の成長に見合う配当を手にする一方、投資判断に変更があれば売却して十分な利益を確保しています。近年バ社が買い増ししているIBM株は高値圏での購入と疑問視する声もありますが、こちらはバリュー株というより成長株としての評価といえるでしょう。「並の企業を安く買うよりも、優良企業を適正な値段で買う方がずっと良い」というバフェットの言葉がそのまま当てはまる事例です。

ちなみにバフェットが初めて株式投資の行ったのは11歳のときでした。1株38.3ドルで3株購入したが株価は一時大きく割り込んだ末、40ドルまで回復した段階で売却したのです。しかしその後の急騰で株価は202ドルまで上昇しました。このときの教訓が短期的な売買のリスクを避ける戒めになっているかもしれません。

バフェットの投資法は単純に数字だけを見て判断できるものではありませんが、あえて挙げるなら株主資本利益率(ROE)や売上高営業利益率が継続的に高いこと、安定成長が継続していること、利益に対して有利子負債が適性範囲に収まっていることでしょうか。数値以外の面では事業内容の分かりやすさ・単純さや経営者の能力・意欲、事業の将来性が材料となります。

その「賢人」「神様」といわれるバフェットでさえ、すべての投資案件に成功しているわけではないのです。われわれ市井の投資家は、バフェットを見習うなかでいくばくかのリターンが得られればそれを幸いとするべきでしょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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