UBER撤退!東南アジアを席巻する配車アプリ「GRAB」

※百計オンラインの過去記事(2019/01/21公開)より転載

世界中で存在感を高めるアプリを利用した配車サービス。日本では自家用車を利用した配車サービスは解禁されていませんが、米国の「UBER(ウーバー)」や「Lyft(リフト)」、中国の「滴滴出行(ディディチューシン)」、インドネシアのバイクタクシー配車サービス「GOJEK(ゴジェック)」など、海外では次々とスタートアップ企業が勃興しています。
東南アジアで圧倒的な存在感を放つのが、マレーシア生まれ、シンガポール育ちの配車サービス「GRAB(グラブ)」です。

「タクシーを安全に利用できるアプリを」がきっかけ

「GRAB」を創業したアンソニー・タン氏は、マレーシアで日産車の総代理店を務めるタンチョン・モーターの御曹司として生まれました。米ハーバード大にMBA留学中、同郷の同級生タン・ホーイリン(Tan Hooi Ling)氏とともに、GRABのベースとなるアプリを使った配車サービス事業を考案しました。

タン・ホーイリン氏のインタビューによると、同氏がコンサルティングファームで働いていたころ、深夜におよぶ激務を終えてタクシーで帰宅すると、娘の身を案じた母が必ず待っていたといいます。タクシー運転手による強盗や強姦などが頻発する東南アジアにおいて、タクシーは安全な乗り物として認識されていなかったのです。「(母親に負担をかけ)とても心苦しく感じた」と同氏は語ります。

そこで両氏は、タクシーの配車手配だけでなくGPSで走行状況をトラッキングできるアプリとして「MyTeksi(マイタクシ)」を創業しました。(Teksiはマレー語のつづりで「Taxi(タクシー)」の意味)
2014年には本拠をマレーシアからシンガポールに移したのです。2016年にはマレーシアのMyTeksi事業と他地域のGrab Taxi事業を統合し、ブランド名を「Grab」で統一しています。

UBER撤退で東南アジア「一強」に、事業範囲を拡大

Grabの快進撃は配車サービスにとどまりません。2017年にはシンガポールで電子決済事業の「GrabPay」を開始しました。

さらに2018年には、Grab最大のライバルだった米系配車サービスの「UBER」が東南アジア事業からの撤退を表明しました。GRABは、同社から「UBER Eats(ウーバー・イーツ)」事業を引き継ぎ、フードデリバリー「Grab food」にも乗り出しました。
Grabの進出国はマレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、カンボジアに広がり、宅配事業のGrabデリバリーなど事業範囲も拡大しています。

Grabの強みは、一貫したプラットフォームです。ユーザーはひとつのアプリを立ち上げるだけで、配車サービスからQR決済までGRABのあらゆるサービスを利用できます。(UBER Eatsを引き継いだGrab foodだけは別アプリの立ち上げが必要ですが、ユーザー情報はリンクされています)

また、運転手とのチャット機能も出色です。配車を予約した時点で運転手とチャットや電話で会話ができるようになり、「渋滞で遅れている」「待ち合わせ場所がわからない」といったリアルタイムでのやりとりが可能です。

アンソニー・タン氏によると、東南アジアのユーザー嗜好を研究して取り入れた機能なのだといいます。こうして地元市場の嗜好を研究し尽くし、GrabはUBERを撤退に追い込みました。

最近では、GrabPayに日本の「モバイルSuica」のような自動チャージ機能が実装されました。ユーザーはアプリとクレジットカードをリンクさせていれば、残高を気にせずともシームレスにあらゆるサービスが活用できます。さらにサービス利用ごとにポイントが貯まり、ポイント数に応じてGrabの割引クーポンと引き換えられるほか、提携の飲食店やECでもサービスを受けられます。

また、ビジネスユーザーとして注目したいのは、Grab経由で予約した配車サービスの領収書が全てEメール経由で自動送付されるという点です。乗車場所と下車した場所、金額、日付、利用時刻がすべて記載されていますので、経費精算の際にとても助かります。

日本企業も続々出資

Grabの躍進には日本企業も注目しています。いち早く行動に移したのはソフトバンクで、2014年に2億5,000万ドルを出資しました。その後も出資を続けています。

また、2016年にはホンダが、2017年には豊田通商が出資しトヨタ自動車とも提携しました。2018年12月にはヤマハもインドネシアを中心としたGrabの二輪車配車事業で提携しています。
若年人口が多く、世界の成長ドライバーとして期待される東南アジア。Grabは配車サービスを超え、ライフラインとして人々の生活を掌握しつつあるのです。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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