コロナ禍に左右されない人脈づくり
~相手の時間をうばわないオンラインコミュニケーション術~
目次
経営者にとって、斬新な発想や次なるビジネスにつなげる人脈やコミュニティづくりは欠かせないものです。しかしコロナ禍によってコミュニケーションの主流はオンラインとなり、人脈づくりに悩める経営者が増えているといいます。新しい出会いはどうやって創出すべきなのか。また、コロナ禍でリアルの接点が急減する中、オンラインをどう活用すべきなのか。国内最大級の女性起業家データベースサイト「女性社長.net」を運営するコラボラボの横田響子氏に、みずからの体験をもとにした人脈拡大策を教えていただきました。
メルマガや冊子で口下手を補う
人脈づくりに関する私のスタンスははっきりしています。それは「ガツガツ」しないこと。ぐいぐいと来られるのもこちらから積極的に行くのも苦手なので、相手のタイミングを見ながら、そして相手に与えるメリットも考えつつ、のんびり人脈を増やしていければいいと考えています。
とはいえ、何もしゃべらず、何も伝えずでは人脈が広がるはずがありません。すでに面識があったり、名刺交換をした方に対しては、私は折を見て自分の進捗状況を伝えるようにしています。私が活用しているのは「コラボラボ通信」というメルマガです。3カ月~半年の間隔で不定期に発行しているに過ぎませんが、自分のことを相手に伝えるにはそれなりの効果があると思います。
内容は、私が感銘を覚えた本の感想だったり、今進めているプロジェクトの中身を紹介したり、注目している女性社長をクローズアップする、またはその瞬間のホットなニュースや自分の雑記などを入れたりなど、とさまざま。会社のフォーマルな情報も入れていますが、メルマガを通してかなりオープンに自分のことを語っています。
固い情報ばかりではあまり印象には残りませんよね。「そうか、この人はこういうことを感じ、こんなことを考えながら仕事を進めているんだ」。そんな風に少し身近に感じてもらえる内容を意識しています。
経営している会社が15周年を迎えたときには、A5サイズにこれまでの歩みをまとめた「コラボラボヒストリー」を作成し、名刺交換時にお渡ししていました。会社にとってのターニングポイントや進めてきた代表的なプロジェクトをイラストも交えてまとめたもので、とても好評でした。口下手でうまくしゃべれない、手紙やメールも苦手という方は、こうしたツールを人脈づくりに活用してみてはいかがでしょう。
セミナーに出向いて名刺交換時にひとこと
一度もお会いしたことはないけれど、なんとかこの人に近づきたい。接点を持ちたい。そうした人がいる場合、私は相手に会いに行きます。
といっても、アポを取って「会ってください」とお願いするわけではありません。その人が登壇するセミナーやパーティー、トークショーなど、自分が参加できる「場」を探して駆けつけます。面識がない人に「自分のために時間を確保してください」とお願いするのはあまりにもハードルが高すぎるので、こちらから先方が参加しているイベントを見つけ、接点をつくるのです。
ほとんどの場合、セミナー終了後に名刺交換タイムが設けられていますから、そのときがチャンスです。その方に著書があればその本を、ブログを開設しているのならその内容を、ビジネスをやっている方ならビジネスの内容や新規の取り組みなどをホームページで読んでおきましょう。そして、名刺交換をしたときにその内容に触れるのです。
「先日のブログのここが面白かったです」「新しいサービスを始められたんですね」。このひとことがあるのとないのとでは相手に与える印象が異なります。
もっとも、相手があまりにも多くの人と名刺交換をしている場合、多少のことでは印象に残りません。その場合はあきらめないこと。私は過去に、同じ方と10回ほど名刺交換をしたことがあります。その方に覚えてもらいたいがために、名刺交換のたびに「私はこういうことをやっていて〜」と必ず相手に伝えていました。すると10回目にはさすがに「よく覚えてますよ」と言われました。もうこれで忘れられることはないはずです。この人とつながりたい、知り合いになりたいと思うのであればぜひ粘りましょう。
オンラインとオフラインで異なる人脈づくりのコツ
中小企業の経営者の方は、おそらくたくさんの会合やパーティー、業界内や地元でのイベントに出席されていると思います。そうした恒例イベントへの参加も大切ですが、いつも同じ年代、同じ業界、同じ業種の同質グループに身を置いているだけでは、新しい情報やビジネスのヒントはなかなかつかめないのではないでしょうか。
斬新な情報に触れたい。最新の情報を得たい。そう考えるのであれば、思い切って世代や業界が異なる人と接点をつくってみてください。
つい最近、私はある若い人から、経営・営業支援のプラットフォーム「チラCEO」について教えてもらいました。これは決裁者同士をマッチングするアプリです。会いたい決裁者を見つけたらメッセージで想いを伝え、アポを獲得することができるもので、すべてがWEBで完結する一種のお手紙サービスといえばいいのでしょうか。とても便利なものだと感心しました。若い人との接点がなければ私はまったく知らないままだったと思います。
最近はこのような人脈づくりに役立つ便利なサービスが登場しています。コロナ禍の影響もあって、オンラインで参加できるウェビナーも増えています。オフィスや自宅にいながらにして参加できて、人脈づくりにも役立つ機会を利用しない手はありません。ITツールに慣れて、「これぞ」と思うイベントやサービスを気軽に利用してほしいと思います。
注意したいのが、オンラインとオフラインでは人脈づくりに明確な違いがあることです。オフラインなら黙っていても自分の存在は相手の視野に入りますが、オンラインで何も発しなければ、あなたは存在していないのも同然です。
Zoomでの会議を体験した方なら経験があると思いますが、Zoomでは誰かがしゃべっているときには話すことはできません。うまく機会をつかめず一度も声を発することができなかった。そういうことが起きがちなのがオンラインの空間です。
だからといって、自分が話す番だからと長々としゃべっては好印象を与えません。ではどうすればいいのでしょうか。私はチャット機能を使って、うまくフォローすることをおすすめしています。この人と知り合いになりたいと思ったら、その人が話しているときに、自分がちょっと気づいたことや意見を気軽にチャットするのです。そうすると、勘がいい人ならあなたの存在に目を留めてくれるでしょう。チャットの使い方とは面白いもので、おのずと人柄も伝わります。チャット機能をオンラインでの人脈づくりに役立ててください。
最後に女性経営者に一言。経営者の世界では女性はまだマイノリティー。頑張って男性経営者との飲み会に参加しているという方は多いと思います。その場に行けば、もしかしてお酌をさせられるかもしれませんが、覚えてもらえることは確かでしょう。
でも、お酒が入らずとも情報交換はできるし、長々と時間をかけなくても人間関係は築けます。男性経営者が集まる会合に行くのは気が進まないのであれば、無理をして行く必要はありません。複数のコミュニティを状況に応じて使い分けることが大事なのです。地元や業界のつながりに加え、全国でつながるオンラインの女性経営者のコミュニティもあり、近年は女性経営者も増加して層が厚くなっています。ですからぜひ、女性経営者のコミュニティに顔を出してみませんか。あなたと同じ悩み、同じ課題、同じ問題を抱えている女性経営者と話せる機会を持つほうが、人脈を広げられるかもしれませんよ。
人脈を広げようと努力することは大事ですが、それで疲弊してしまっては意味がありません。気張らずにカジュアルに、それでいて相手に与えるメリットを考えながら着実に人脈を広げていきましょう。
お話を聞いた方
横田 響子 氏よこた きょうこ
株式会社コラボラボ 代表取締役
1976年生まれ。お茶の水女子大学卒業後、1999年株式会社リクルート入社。営業・新規事業および事業企画を経験後、2006年株式会社コラボラボ設立(現職)。女性社長.net(会員約3000名※2020年8月現在)、「J300」など女性社長を応援する企画に注力。Forbes Japan「未来を創る日本の女性!フォーブスが選ぶ10人」等選出。男女共同参画重点方針専門調査会、総務省自治体戦略2040構想研究会、第32次地方制度調査会、財務省財政制度等審議会など男女共同参画、行財政改革から地方自治分野まで多数委員を歴任。著書に「女性社長が日本を救う!」(マガジンハウス)がある。
[編集] 一般社団法人100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]東洋経済新報社ブランドスタジオ