なぜゾンビ企業が増えていくのか。数々の企業を見てきた小宮一慶氏が語る!

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目次

いまや10社に1社と言われ、日本経済の問題点の一つにも数えられる「ゾンビ企業」の存在。ゾンビ化してしまっている企業が陥っている悪循環とは、はたして何か。大企業から中小企業まで幅広く経営コンサルティングを手がける小宮コンサルタンツ代表取締役CEOの小宮一慶氏にお話しいただく連載の第11回です。

企業の新陳代謝が悪い日本経済

この4月に10年ぶりに日本銀行の総裁が代わります。植田和男新総裁が金利政策をどうするかは今後の動きを注視しなければいけませんが、いずれにせよ現在よりも金利を下げることはありません。もし上げることがあれば、いわゆる「ゾンビ企業」の一部は淘汰される状態になるでしょう。

日本の問題点を示す数字はいくつもありますが、その一つが開業率と廃業率です。いずれも5%ほどで、企業の新陳代謝が著しく悪いのが日本経済の特徴です。これが欧米だと10%ほどです。このことが日本企業の優秀さを示しているのならいいのですが、そうではないことが問題です。なぜ日本ではそれだけ開業率・廃業率が低いのかと言えば、政府からの支援と、さらには低金利が理由の一つに挙げられます。そうして生まれているのがゾンビ企業です。

ゾンビ企業の定義は明確ではありませんが、一般的には、3年以上に渡り、インタレスト・カバレッジ・レシオが1未満の企業と定義されています。インタレスト・カバレッジ・レシオは、「営業利益+受取利息配当金」を支払利息で割った数値で、簡単にいえば、営業利益よりも利払いが大きいということです。この異常なまでの低金利下にもかかわらず、いまや全企業の10社に1社くらいがゾンビ企業と言われており、今後、さらに増えるとの見通しもあります。現在は借金をして何とか生き延びている企業でも、これから金利が上がれば当然ながら厳しくなるでしょう。

ゾンビ企業が増えることは、社会にとって有益であるはずがありません。それは、生産性の低い企業が生き残り続けるということとともに、そこで働く人には十分な訓練や教育が与えられないことです。それでは優良企業への転職もままなりません。しかし、国としても政権への支持率の問題もあり、ゾンビ企業であってもできるだけ潰したくないというのが本音でしょう。また、いま金融機関で要職を務める人たちは、90年代のバブル崩壊を覚えている世代です。当時は多くの企業を倒産させた結果、潰れた金融機関もあったわけです。その苦い記憶が色濃いはずで、銀行にとって企業は収益機会ですから、たとえゾンビ企業でもそれを潰すこと自体にも抵抗があるでしょう。

ゾンビ企業はなぜ増えたのか

もちろん、好き好んでゾンビと化している企業はありません。私もこれまでに潰れた会社を何社も見てきましたが、自分の会社が潰れていいと考える経営者は存在しません。とくに日本では一度でも経営する会社を潰せば、ビジネスパーソンとしての人生が終わるに等しいくらいメンツや財産を失うことになります。アメリカであれば、企業を倒産させたこともある意味勲章で、一つのビジネス経験として次のビジネスにチャレンジしますが、日本はまだそうした風土はないのです。

ですから、ゾンビ企業の経営者は必死に会社を延命させようとします。そしてそのために借りられるだけお金を借りてしまい、余計に傷口が広がるのです。ゼロ金利政策とは、そんなゾンビ企業にとっては渡りに船でしたが、当然ながらお金を借り続ければ、金利上昇時のリスクが高まるとともに、いざ潰れたときのダメージが大きい点を忘れてはなりません。従業員にとってもたまったものではありません。

もう一つ、ゾンビ企業が増えている理由を考えると、市場が成長していない点も挙げられます。市場が右肩上がりならば、多少荒っぽい経営をしても利益を出し、乗り切れることがあるものです。バブルのころが実際にそうでした。当時は皆に平等に強い光が降り注いでいたのです。しかしいまは浴びられる光が弱まっているので、経営力が少し劣ればうまくいかないことも少なくありません。その分を援助しているのは政府です。

日本経済がかつてあれほど順調に成長したのは、私はひとつは冷戦構造に理由があったと考えています。日本は西側諸国とともに共産圏と対峙していましたが、良くも悪くもアメリカがつくった平和憲法のおかげで、軍事的には前面に出る必要はありませんでした。その分、安心して経済を成長させることができたのです。アメリカもそれに協力していた面があります。言わば甘やかされていたわけで、1990年の金融ビックバンの目玉の一つは会計制度の改革でしたが、欧米と比べれば2周遅れの制度をそれまで使っていました。古い会計制度では、利益を含み益にしたり、損失の先延ばしもある程度認められました。冷戦の時代まではそれが日本では許されていたのです。

しかも、日本企業が会計制度の改革後、企業経営がグローバルスタンダードに追いついたかと言えば、必ずしもそうではありません。これもまた、ゾンビ企業が増えた要因です。もちろん、強い企業はグローバル化を加速させて海外で稼ぐという意識に転換し、実際にそうしましたが、中小企業の大部分は置き去りにされました。とくにサービス業を営む中小企業は国内市場を相手にしている会社が多く、その国内市場自体が成長しなければどうしても厳しい戦いになります。

もし、中小企業がこれから海外をめざそうとするならば、いまであればまずはアジア市場がターゲットになるでしょう。ただし、誤解してはいけないのは、国内でしっかりしたビジネスを展開できていない企業が海外で成功を収められると思っていたら、余計に痛い目に合いかねません。考えてみれば当たり前の話で、同じバックグラウンドをもち、言葉も通じる相手に対してうまくビジネスを展開できないのですから海外でうまくいくはずがありません。まずは、国内での事業の徹底、強化を行い、基盤をしっかりさせて海外展開を狙うのです。

「知の時代」に中小企業は生き残れるか

ゾンビ企業にならないようにするためには、やはり生産性の向上を意識し続けなければなりません。これはどの業界にも言えることです。それでは、生産性の向上とは何かと具体的に言えば、働く人1人当たりの付加価値額を増やすことです。付加価値のなかで一番払い出ししているのは人件費であり、ならば当たり前の話ですが、付加価値額を増やさなければ、企業の利益が増えて従業員の給料が上がることもありません。

いまインフレを契機に賃上げが進んでいますが、なぜ5~6%も簡単に上げている企業があるかと言えば、その会社の生産性が高いからです。そして、良い人材はそうした企業へと向かう。ピーター・ドラッカーはかつて21世紀を「知の時代」と語りましたが、その時代を生き残るためには優秀な人材を確保することが第一義で、そのためには高い給料を払える構造にしなくてはいけない。そんな企業が好循環で業績を伸ばす時代なのです。

同時に重要になるのが、ビジネスのスケールでしょう。菅義偉政権の時代にデービッド・アトキンソン氏は「日本は中小企業の企業規模が小さい」と語っていましたが、私もその通りだと思います。社員の人数が少ないと、時に非効率な状況が生み出されるわけで、たとえば会社のホームページの更新は20人の会社であろうが30人の会社であろうが数百万円かかります。20人と30人では企業規模は5割違います。

これはDX(デジタルトランスフォーメーション)についても同じことが言えます。DXは基本的に手順が決まっていて、まずはすべての業務を棚卸しして、それぞれが本当に必要か否かを徹底的に見直します。そのうえで、不必要な業務は止めて、必要な業務は他社事例にも照らし合わせてIT化を検討して、それで生まれた余剰人員をより創造的な仕事に向かわせることが大原則です。その際に、IT関係の初期投資は20人の会社でも30人の会社でもほとんど同じです。

一番良くないのは中途半端な規模の会社

ただし、誤解してはいけないのは、たとえば家族だけなど少人数で経営しているような企業が悪いというわけではないということです。なぜかと言えば、コストが低くて事業を回せるのであれば、それに越したことはないからです。むしろ一番良くないのは、中途半端な規模の会社です。

たとえば、3月末まで放送されていたNHKの連続テレビ小説『舞い上がれ!』では主人公のお義父さんとお義母さんが2人でお好み焼き屋を切り盛りしていましたが、じつはあれはあれでベストなかたちです。変にアルバイトを雇えば、その人件費のために稼がないといけないし、規模も無理に大きくする必要が生じるかもしれません。

もし仕事が十分にあり、かつ従業員にしっかりとした賃金を払えるならば、そのときに初めて事業の拡大を検討するべきでしょう。経営コンサルタントの大先輩の一倉定先生は、「同じ地域で同業者よりも1割高い給料を払え」とよく話していましたが、これはとても頷ける話です。そのためには生産性を上げないといけないわけで、ここで話が戻りますが、そうすれば好循環が生まれてゾンビ企業になることもないのです。

そして重要になるのが、先ほども申し上げた1人当たりの生産性、つまり付加価値額を十分出すことです。日本ではスケールが小さな企業が多く、たしかに非効率な側面が否めません。しかし一方で、企業とは大きければいいという話ではないことも、経営者は肝に銘じなければいけません。お客さま第一を徹底し、適正な規模を見極めて経営することが、ゾンビ企業に陥らない重要な要素です。ピーター・ドラッカーは、「大きくなるよりも強くなるほうが大切」と言っていますが、「強くなる」とは、お客さまが望む商品やサービスを適正価格で提供できることともに、一人当たりの生産性を高めることなのです。

著者

小宮 一慶 氏こみや かずよし

株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役CEO

大企業から中小企業まで、企業規模や業種を問わず幅広く経営コンサルティング活動を行なう一方、講演や新聞・雑誌の執筆、テレビ出演も行なう。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』(日本経済新聞出版社)、社長の心得 (ディスカヴァー携書)『経営が必ずうまくいく考え方』(PHPビジネス新書)など著書多数。

[編集] 一般社団法人 100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]株式会社PHP研究所 メディアプロモーション部

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