経営者にいまおすすめの本6冊 「人材育成」編

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残業は嫌い。人と深く付き合おうとしない。気に入らなければすぐに会社を辞めてしまう。その一方で、安定は願う——。Z世代とも呼ばれる近年の若者に対して、世間ではそんなイメージが先行することも多々あるようです。しかし、実際はどうなのでしょうか。企業は彼らをどのように育成し、いかにして定着率を上げるべきなのか。こうした課題に長年取り組んできたトップランナーたちによる著書6冊を紹介します。

「ゆるい職場」の人材育成論

『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか “ゆるい職場”時代の人材育成の科学』

古屋星斗著 日経BP 1,760円

近年の若者を理解するうえで企業が認識すべきことは、「若者の仕事・キャリアに関する考え方の多極化」と「職場環境の劇的な変化」の2点であると、著者・古屋星斗氏は提起しています。古屋氏は、一橋大学大学院社会学研究科修了後、経済産業省を経て、現在はリクルートワークス研究所で主任研究員を務める、若手育成・キャリア形成研究の専門家です。
古屋氏が実施したアンケートによると、「仕事には我慢が伴うものだ」という意識自体は、若手もその上の世代も変わりません。一方、「辛くても成長できる環境に身を置きたい」という意識は、今の10代でその傾向が強いといいます。こうした結果からは、Z世代と呼ばれる近年の若者に対するイメージと実態との乖離が見えてきます。

昨今の日本では、働き方改革によって労働時間が短縮されたり、ハラスメントには厳しい処分が下されたりと、職場環境は大幅に改善されています。その一方で、若手の離職率は高い傾向にあります。

この傾向は「キャリア不安」の現れではないかと著者は分析しています。職場の居心地が良すぎると、若手社員は「社外で通用する人材に成長するまでに長い時間がかかりそうだ」と不安を感じてしまう。その不安が転職に向かわせる、というわけです。社員の成長につながる“質的負荷”が職場から失われつつあることを感じる若手は、長い目で見た「キャリア安定性」を求めて転職するのだと考えられます。

企業が若手に質的負荷を提供するためには、いわゆる日本の「ふるい職場」に戻るのではなく、「ゆるい職場」時代ならではの新たな育成法を確立する必要があります。つまり、現在日本で進行中の働き方改革と、著者が本書で提唱する「育て方改革」の2つを融合させることによって、若手が活躍できる職場が創出されると考えられます。

本書の前半部では、これらの傾向が豊富なデータを基にあぶり出され、後半部では、マネージャーに求められるスキルや、「ゆるい職場」における若手の育て方のほか、優秀な人材の流出を食い止める方法、さらには現代で考慮すべき新たな組織論などが解説されています。

求職者に「選ばれる」企業は、人を育てている

『全員を戦力にする人財育成術 離職を防ぎ、成長をうながす「仕組み」を作る』

有本均著 ダイヤモンド社 1,650円

著者の有本均氏は、早稲田大学在学中からマクドナルドでアルバイトとして勤務し、1979年に日本マクドナルドへ入社。店長や統括マネージャーなどを務めたのち、スタッフを育成するための社内部署「ハンバーガー大学」の学長に就任した経歴を持ちます。その後、ファーストリテイリングの柳井正代表にスカウトされて移籍し、スタッフ育成機関である「ユニクロ大学」の部長に就任。一貫してサービス業における「人財」育成に携わってきました。

「企業が人を選ぶ時代」から「人が企業を選ぶ時代」へと移り変わった今、人財を採用できていない企業は「選ばれていない企業」だといえます。選ばれる企業になるためには「人が成長できる企業」であることが重要であり、そこでは人財育成のシステムが確立しているかどうかが問われます。優秀な人だけを採用することが難しいなかでは、「入った人を全員育てる」という考え方が求められ、それを実践するためのノウハウは「仕組み化」にあると有本氏は説きます。

現在は教育・研修サービスを手がける有本氏が、企業から相談を受けた際に最初に説明するのが「グローイング・ピラミッド」です。それは企業活動においてもっとも重要な「利益」の創出を頂点とした三角形の図で表され、その下には「売上」「顧客満足」「人財育成」が続きます。つまり人財育成とは、企業活動を支える土台であり、相応の時間とお金をかける必要があります。人財育成に費やされるお金はコストではなく、投資だという考え方です。

人財育成の基本は「人が辞めない理由」をつくることであり、そのために企業がすべきことは、「教育」「評価」「労働環境」の3つを整備することだとされます。また、人を成長させる手法として有本氏は、「基準を示す」「教える」「要求する」「評価する」の4ステップで構成される「グローイング・サイクル」を提唱。有本氏の長年の経験に基づいたその理論は、シンプルながら説得力に富んでいます。

OJTを再定義、G-POPで変わるこれからの人材育成

『自分で考えて動く社員が育つOJTマネジメント』

中尾隆一郎著 フォレスト出版 2,200円

本書のタイトルにある「OJT」は、一般的には新人、若手、異動者のための現場における育成、とくに採用時や異動時など期間限定のものだと認識されています。中には、現場に丸投げされる「計画的でないOJT」もしばしば見受けられます。

しかし、本書の著者である中尾隆一郎氏は、経営者をも含めた組織全体を対象とした現場学習を考案し、OJTを再定義しました。それによって生まれたのが、すべての組織メンバーが成長し続けるためのOJT、「G-POPマネジメント」です。

G-POPとは、Goal(目標や計画の立案)、Pre(ミッションの最適な振り分け)、On(実行と修正)、Post(振り返りによる組織知化)の頭文字をとった造語で、このサイクルを反復することによって自身だけでなく、組織のナレッジ(知識)を高めることを目的としています。G-POPマネジメントは、組織内の個々のメンバーが主体的に思考し、「自律自転する組織」をつくりたいと考えている組織に効果があるとともに、近年注目されるアジャイル開発に適した組織づくりにも役立つと、中尾氏は考えています。

近年では、上司と部下の定期的な個人面談「1 on 1」を採用する企業が増え、その成功事例が報告されていますが、この育成手法には時間を調整する必要があったり、両者の相性の良しあしが無視できなかったりと、さまざまな課題があります。そこで著者はG-POPマネジメントをベースに、4人のメンバーに対して1人の上司が同時面談するGC(グループ・コーチング)を提唱。1 on 1における多くの課題を解決するこの育成手法は、リモートワーク主体の仕事スタイルとも相性がよいOJTとして注目を集めています。

『改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』

山元浩二著 あさ出版 1,760円

中小企業における理想的な組織を実現するための、スタンダードな「人事評価制度」を紹介。多くの経営者に読み継がれるロングセラーの改訂新版である本書では、人材を育てる仕組みである「ビジョン実現型人事評価制度」の実践方法を、豊富な図解とともに3つのステップでわかりやすく解説しています。

『教えないスキル: ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』

佐伯夕利子著 小学館 1,012円

欧州リーグでの優勝経験もあるスペイン1部リーグのサッカーチーム「ビジャレアル」。同チームの選手育成と指導大改革に携わった著者・佐伯夕利子氏が、組織をまとめ上げる手法を伝授。サッカーだけでなく、ビジネスでの若手育成にも役立つメソッドを詳細に紹介しています。

『自律型組織をつくるマネジメント変革 人の能力を引き出す「ピープルマネジメント」』

菊池裕太著 現代書林 1,540円

「ピープルマネジメント」とは、従業員の意欲と能力を最大限に引き出し、自律型の組織を形成するマネジメントスタイル。上司が部下の仕事の進捗を管理する従来型とは異なり、仕事を楽しむ力を育成するこのマネジメント法は、グーグル、GE、スターバックスなど大手海外企業のほか、日本企業での導入も進んでいます。

[編集]一般社団法人100年企業戦略研究所
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