『コロナショックと格差拡大』②

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100年企業戦略研究所所長の堀内勉が数多の情報を読み解き、世界経済・日本経済を考察するシリーズです。
今回は『コロナショックと格差拡大』②をお届けします。
『コロナショックと格差拡大』①はこちら

ニューヨーク大学経営大学院のスコット・ギャロウェイ教授は、著書『the four GAFA:四騎士が創り変えた世界』において、Google(Alphabet)、Apple、Facebook、Amazonを「ヨハネの黙示録の四騎士」(それぞれが地上の4分の1を支配し、剣、飢饉、悪疫、獣によって地上の人類を滅ぼす権威を与えられた四騎士)にたとえました。

もはや、世界の歴史は、「GAFA以前」と「GAFA以降」とでもいうような様相を呈していて、神にも擬せられるほどの力を持つようになったGAFAは、人類の生活とビジネスのルールを根本から変えつつあり、これからも変え続けるだろうと予言しています。
関連コラム『「GAFA 四騎士が創り変えた世界」GAFA以降のゲームのルールにどう立ち向かうのか』はこちら
※「HONZ」2018年8月30日より転載

ギャロウェイ教授は、新型コロナウイルスのパンデミックがGAFAを筆頭とするビッグテック企業に与えた影響について、ますますパワフルになっていると指摘し、今後しばらくは、ビッグテックによる企業統合の動きが続くと言います。そして、コロナショックが始まった頃、デジタルマーケティングの6割をコントロールしていたGoogleとFacebookのシェアは今後、7-8割にまで高まると予測しています。

特に注目すべきことは、eコマースの売り上げが急増していることです。コロナの影響で食料品や衣料品もオンライン購入に大きくシフトしています。元々、苦境に陥っていたデパートやアパレルショップやレストランが廃業に追い込まれるなど、新型コロナウイルスは経済のあり方に新たな変化をもたらしたというよりは、これまでの変化を促進したと考えた方が良いかも知れません。

貧富の格差についても同じことが言えます。今回のコロナショックでは、感染率や死亡率が、国や地域や人種などによって大きく異なっています。これは、住居を含む日常の生活スタイル、リモートワークができるか否かといった働き方、医療へのアクセスレベルなどの違いによるものと考えられています。また、教育についても、家庭ごとにオンライン授業へのアクセス環境が異なっていて、パソコンやインターネット環境の有無によって、大きな格差がついていると言われています。

こうした中で、アメリカの富裕層の資産が、コロナショックの3カ月で5,650億ドル(約62兆円)増えたという記事が掲載されました。この報道によると富裕層らの現在の資産総額は3兆5,000億ドルで、感染拡大初期から19%増加しています。

今年3月18日時点から、新規の失業手当を申請したアメリカ人の数は4,300万人近くに達するのに対し、アマゾンを率いるジェフ・ベゾスの資産だけでも、同日以降362億ドル、資産が増えたと言われています。

今回のコロナショックによる実体経済の収縮は、社会的弱者だけを直撃しているという点において、金融機関と大企業を直撃したリーマンショック時とは大きく様相が異なります。むしろ、今回の各国による大幅な金融緩和措置は、株式や不動産に向かい、結果的には富裕層の資産を増やすことになっているのです。

これは、まさに『21世紀の資本』において、経済学者のトマ・ピケティがデータをもって歴史的に証明した、r(資本収益率=投資のリターン)>g(経済成長率=所得の伸び)を確認したことに他なりません。

このように、新型コロナウイルスの影響で経済格差の拡大加速が懸念される中、7月13日には、世界の富豪でつくる団体「ミリオネアズ・フォー・ヒューマニティー」は、ディズニー家の一族などアメリカの起業家や投資家ら83人が署名した書簡を公表し、各国の政府に対して自分たちのような富裕層に大幅に増税するよう求めました。

アメリカでは、11月の大統領選挙に向けて野党・民主党が格差解消のために大企業や富裕層に増税する姿勢を強めていて、経済界ではこうした動きに警戒する声が根強い一方、経営者や富裕層の一部からは、増税に賛同する動きも出始めているのです。

このように、今、世界では、コロナショックが経済の収縮を招き、エッシェンシャルワーカー(社会における必要不可欠な労働者)を経済的な苦境に陥れると同時に、新型コロナウイルスへの罹患リスクを高め、経済を立て直すための各国の超金融緩和政策が株高と不動産高を招き、却って富裕層の資産を増加させることで、貧富の格差を更に拡大するという、政治的に見ると極めて難しい状況になっています。

ここから生まれる国民の不満と憤りが、アメリカに見られるような国民の右傾化を促すのだとすれば、アメリカ大統領選挙においても、バイデン有利との前評判にも関わらず、トランプ大統領再選ということが、現実味を帯びてくることになるかも知れません。

[参考文献]
印南敦史『コロナ後「GAFAやBAT」に続く急成長企業の息吹 時間を節約してくれる存在がこの先大きくなる』(2020/08/09),
東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/articles/-/365219
ジャレド・ダイアモンド、ポール・クルーグマン、リンダ・グラットン、マックス・テグマーク、スティーブン・ピンカー、スコット・ギャロウェイ『コロナ後の世界』,大野和基(編著),文藝新書,2020年
スコット・ギャロウェイ『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』,渡会圭子(訳),東洋経済新報社,2018年
トマ・ピケティ『21世紀の資本』,山形浩生・守岡桜(訳),みすず書房,2014年
堀内勉『「GAFA 四騎士が創り変えた世界」GAFA以降のゲームのルールにどう立ち向かうのか』(2018/8/30),HONZhttps://honz.jp/articles/-/44902
CNN『米富裕層の資産、コロナ禍の3カ月で62兆円増える』(2020/6/5),https://www.cnn.co.jp/business/35154855.html
NHK『世界の富豪83人「私たちに課税を」 新型コロナ』(2020/7/14),https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200714/k10012514051000.html

著者

堀内 勉

一般社団法人100年企業戦略研究所 所長

多摩大学大学院経営情報学研究科教授、多摩大学社会的投資研究所所長。 東京大学法学部卒業、ハーバード大学法律大学院修士課程修了、Institute for Strategic Leadership(ISL)修了、東京大学 Executive Management Program(EMP)修了。日本興業銀行、ゴールドマンサックス証券、森ビル・インベストメントマネジメント社長、森ビル取締役専務執行役員CFO、アクアイグニス取締役会長などを歴任。 現在、アジアソサエティ・ジャパンセンター理事・アート委員会共同委員長、川村文化芸術振興財団理事、田村学園理事・評議員、麻布学園評議員、社会変革推進財団評議員、READYFOR財団評議員、立命館大学稲盛経営哲学研究センター「人の資本主義」研究プロジェクト・ステアリングコミッティー委員、上智大学「知のエグゼクティブサロン」プログラムコーディネーター、日本CFO協会主任研究委員 他。 主たる研究テーマはソーシャルファイナンス、企業のサステナビリティ、資本主義。趣味は料理、ワイン、アート鑑賞、工芸品収集と読書。読書のジャンルは経済から哲学・思想、歴史、科学、芸術、料理まで多岐にわたり、プロの書評家でもある。著書に、『コーポレートファイナンス実践講座』(中央経済社)、『ファイナンスの哲学』(ダイヤモンド社)、『資本主義はどこに向かうのか』(日本評論社)、『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』(日経BP)
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