飲食業界進出 繁盛店をつくるポイントは?
本業にプラスワンで売上アップ『会社の副業』ガイド[第1回]

知名度の高い企業のなかには、業種の異なる複数の事業を展開したうえで、それぞれを法人化していることがあります。グループの力をまとめることで勢力を増大させ、大企業としての存在感を確かなものにしているのです。

しかし、大企業でなくとも他業種で新規事業を検討する価値は十分にあります。リスク分散や節税に繋がることはもちろん、ビジネスチャンスの増大という相乗効果も期待できるからです。

今回は「新規事業として、飲食業界に進出した場合」について、考えてみましょう。

インバウンドニーズの高まりで「飲食業界は好調」を継続

一般社団法人日本フードサービス協会が行った2018年の年間調査によると、外食産業全体は堅調に推移しています。売上・店舗数・客数・客単価のすべてにおいて、前年を下回る項目はありませんでした。こうした上昇傾向は7年間続いています。とはいえ、どの項目に関しても飛躍的な伸びが見られたわけではありません。売上は2.3%増大したのに対し、店舗数や客数の伸び率は1%以下でした。

売上増の最大の要因として考えられるのは、訪日外国人の増加に伴う収益です。特に外国人の興味を惹く和風のファストフード(回転寿司など含む)は、売上や客数が好調でした。またファミリーレストランも人気で、なかでも焼肉系のお店は前年比5%増の売上を記録しています。これは全体でも最高の伸び率です。

このように明るい話題が多い飲食業界ですが、課題も抱えています。たとえば原材料の高騰が挙げられます。特に野菜の価格アップは業界人を悩ませ、やむを得ず値上げに踏み切る店舗が増えています。

そして最も難題なのが、従業員の確保です。給与水準は高いとはいえず、オペレーションが複雑なことから人気は下降気味で、スタッフ募集に対し、求職者の集まらない状況が続いています。

新規事業として飲食業界への進出を考えるのであれば、こうした問題へしっかりと対策を講じておく必要があるでしょう。

「繁盛店を生み出す」ために押さえておきたいポイントは

飲食店を脅かす最大の存在となっているのは、いわゆる惣菜店やコンビニエンスストアで販売している「中食」です。調理せずとも、自宅でくつろぎながら食べられる手軽さは魅力的で、コスト的にも外食するよりも安くなる場合が多く、支持されています。こうしたニーズは単身の若年層だけでなく、高齢層にも多く存在しているため、今後ますます支持を集めていくと考えられています。

飲食店が中食と対抗するためには、店内だけでなく、テイクアウトメニューの開発を念頭におくのもひとつの手です。店内の主力商品を選ぶ際に「低温下で劣化がはっきりと現れてしまうメニュー」をあらかじめ避けておけば、対応は容易になります。また近年は「Uber Eats」などの配送スタッフ不要の出前サービスが普及してきました。上手に活用できれば、販路を店外へ大きく広げられるでしょう。

さらに、SNSの浸透に伴い「口コミが集客に繋がる」というケースが増えています。SNSでいわゆる「バズる」ことを狙うのであれば、写真映えを意識したメニュー作りや、内外観の雰囲気作りに創造性を働かせる必要があるでしょう。もちろん野菜など価格の高騰が目立つ原材料については、独自ルートを確保して仕入値を抑える根回しも大切です。

また、「ハードは揃ったが、ソフト不足で立ち行かなくなる」という事態を招かぬよう、スタッフケアには慎重に対応する必要があります。コアメンバーの人数は充分に確保し、待遇や福利厚生を整えておかなければなりません。ヘルプスタッフに外国人や主婦などの幅広い層を積極的に採用していけば、店舗としての持久力はさらに上がっていきます。スタッフの定着率を高める努力は、開店後の最優先課題であることを肝に銘じておきましょう。

飲食店開店までのプロセスとポイント

店のコンセプトが固まってきたら、いよいよ開店への本格的な準備が始まります。その流れを見ていくことにしましょう。まずは準備期間ですが、最低でも半年間は必要です。それ以前の段階で店舗の特徴、ターゲット層、そして価格帯などの店舗運営のアウトラインを決めておく必要があります。

物件探し

物件探しは、飲食店開業において最優先の課題です。ターゲット層の往来はどれほどあるのか、周辺にオフィスや住宅街、商業施設などはあるか、競合店舗の状況はどうなのかなど、商圏分析を念入りに行います。

立地条件は飲食店の明暗を左右するため、物件探しがスムーズに運ばないと、計画はどんどん遅れていきます。インターネットを活用するのはもちろん、スタッフ自身が候補地を回ったり、不動産会社にも助力を請うなど、多角的なアプローチが必要です。

なお、物件の決定後には内外装の改装工事が控えています。こちらに要する期間は2ヵ月程度です。半年後の開店を見据えるなら、物件探しには、長くても4ヵ月程度しかかけられないと理解しておきましょう。

届け出と人材募集

飲食店の開店にあたっては、法的な問題もクリアしておかなければなりません。保健所や消防などの諸官庁への届出は、開店1ヵ月前までに済ませておく必要があります。営業開始にあたっては、保健所の審査を通過しなければなりません。衛生面はもちろん、換気扇の有無からトイレの位置、そして更衣室の設置まで確認されるので、問題のない環境を整えておきましょう。

なお飲食店には「食品衛生責任者」の資格取得者、そして「防火管理者」の在籍が求められます。いずれも数千円~1万円程度の費用と講習受講、またはテスト通過が求められるので、責任者の選出は早めに行っておきましょう。

またヘルプスタッフを含む人材の募集は、遅くても2ヵ月程度前から始め、随時研修を進めておくといいでしょう。広報宣伝活動は、開店1ヵ月前には開始しておく必要があります。

事業計画書の重要性

上記のような内容をスムーズに進行させていくためには、「事業計画書」が重要になります。コンセプトの立案後から物件探しの前までが、事業書計画書作成のタイミングになります。

一般的な事業計画書は、融資を受ける際の提出資料にもなるため「創業の動機」や「経営者の略歴」などの記載が求められますが、企業が別事業として展開する際には、重視しなくても良いでしょう。

資料に落としこむべき必要事項は、下記の通りです。

  • 取扱う商品やサービスの内容(具体的な値段例も記載)
  • セールスポイント
  • 取引予定先
  • 必要資金(工事費など)
  • 開業後の見通し(月間の売上目標など)

担当者には開業準備のスタート前に「ある程度精度の高い事業計画書を作成する」という、大仕事が待っています。適任者の選出を含めると、前倒しで1年程度の準備期間が必要になると考えておきましょう。

飲食業界を取り巻く環境と、そのなかで飲食店を開業するための一般的なプロセスを見てきました。特に飲食店では衛生面での責任が問われるため、無計画に進めると大きなトラブルに発展する可能性があります。しかし「食」は誰にとっても身近なものです。軌道に乗せることができれば、安定的な収益をもたらす事業となるでしょう。

 
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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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