増加する自然災害…被災した中小企業を支援する補助金
~中小企業経営者のための補助金・助成金ガイド[第3回]

近年、毎年のように台風や大雨、そして地震の被害が発生しています。経営基盤が必ずしも万全ではない中小企業にとって、自然災害の影響はきわめて深刻です。被災した際の補助金などについてあらかじめ確認しておきましょう。

台風、洪水…自然災害と中小企業の被災状況

今年に入って猛威を振るっているのがCOVID-19と名付けられた新型コロナウィルスによる感染症の広がりです。現在進行形でどれくらいの影響が発生するのか不明ですが、中小企業も警戒を怠るわけにはいきません。万が一、従業員の中から発症者が出ると、営業などに大きな打撃となるのは必至です。

感染症ももちろんですが、経営に突然の危機をもたらすのが自然災害です。2018年には6月の大阪府北部地震、7月の西日本豪雨、9月の北海道胆振東部地震、また2019年7月以降の台風19号、21号などがあり、それぞれの地域の中小企業に大きな被害が発生しています。

今後も、首都直下地震や南海トラフ地震の発生が想定されおり、気が抜けません。

2019年版中小企業白書によると、日本における自然災害の発生件数では「台風」が57.1%と最も多く、次いで「地震」「洪水」が続きます。一方、被害額では「地震」が8割超を占め、次いで「台風」「洪水」となっています。

(出所)中小企業庁「中小企業白書2019」398ページのデータを基に株式会社ボルテックス100年企業戦略研究所が作成

中小企業にとって自然災害による被害は、建物や設備における物的損失はもちろんのこと、従業員の出勤不能や部品の供給ストップなど様々な形で広がります。そして、営業の停止が長引けば長引くほど、これまでの仕入先や販売先が減少するリスクが高まり、最悪の場合は倒産に至る可能性もあります。

被災した中小企業を支援する補助金

自然災害への備えは基本的に、それぞれの企業が行うべきであり、そのためのBCP(Business Continuing Planning:事業継続計画)が注目されています。

それとともに、被災した中小企業への支援として、補助金が設けられることもあります。

たとえば、2019年の台風19号の際は、令和元年度「被災小規模事業者再建事業費補助金」(持続化補助金台風19号型)の公募が行われました。

これは、2019年10月に発生した台風19号の暴風雨による激甚災害の被災区域において、被害を受けた小規模事業者の事業再建を支援するため、商工会等の支援機関の助言を受けながら行う、事業再建に向けた取組に要する経費の一部を補助するものです。

令和元年度「被災小規模事業者再建事業費補助金」(持続化補助金台風19号型)

<補助対象者>
・宮城県、福島県、栃木県、長野県に所在する台風19号により直接被害または売上減の間接被害を受けた小規模事業者
・岩手県、茨城県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、静岡県に所在する台風19号により直接の被害を受けた小規模事業者
※2020年2月中に事業が完了する取組が対象

<補助率>
補助対象経費の3分の2以内(宮城県、福島県において一定の要件を満たす場合は定額)

<補助上限>
宮城県、福島県、栃木県、長野県の事業者:200万円
岩手県、茨城県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、静岡県の事業者:100万円

自然災害の際に常にこうした補助金が用意されるわけではありませんが、被災した中小企業にとっては少しでも被害をカバーし、いち早く復旧するためにはぜひ、活用したいものです。

また、災害により被害を受けた中小企業に対しては、次のような支援策が設けられています。

災害復旧貸付

災害により被害を受けた中小企業・小規模事業者等に対して、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫が事業復旧のための運転資金及び設備資金を融資するものです。

例)日本政策金融公庫の災害復旧貸付(国民生活事業)

<貸付限度額>
各貸付制度の貸付限度額に1災害あたり上乗せ3千万円

<償還期間>
適用する各貸付制度の貸付期間に準じる
※普通貸付を適用した場合は10年以内(うち2年以内の据置可能)

以下のように、状況に応じて追加的に開設される対策もあります。

災害復旧高度化事業

大規模な災害により被害を受けた事業用施設を中小企業者が共同で復旧する場合、都道府県と独立行政法人中小企業基盤整備機構が必要な資金の一部の貸付けを行うものです。

<貸付割合>
90%以内

<償還期間>
20年以内(うち3年以内の据置可能)

<貸付利率>
無利子

信用保証(セーフティネット保証4号)

自然災害等の突発的事由(豪雨、地震、台風等)により経営の安定に支障が生じている中小企業者への資金供給の円滑化を図るため、信用保証協会が一般保証とは別枠で保証を行うものです。

<対象者>
(イ)、(ロ)の両方に該当する事業者(間接的な被害を受けた方も含む)
(イ)指定地域(災害救助法適用または都道府県から指定の要請があって、国が認めた地域)において1年間以上継続して事業を行っていること
(ロ)災害の発生に起因して、当該災害の影響を受けた後、原則として最近1ヵ月の売上高等が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2ヵ月を含む3ヵ月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること(売上高等の減少について、市区町村長の認定が必要)

<保証割合>
融資額の全額を保証(100%)
※無担保8千万円、最大で2億8千万円
※一般保証とは別枠で利用可

<保証利率>
信用保証協会所定(1.0%以内)

信用保証(災害関係保証)

災害により事業用資産等に直接的な被害を受けた中小企業者への資金供給の円滑化を図るため、信用保証協会が一般保証およびセーフティネット保証4号とは別枠で保証を行うものです。

<対象者>
災害により、事業所、工場、作業所、倉庫等の主要な事業用資産に倒壊等の直接的な被害を受けた事業者(※市町村等が発行する罹災証明書が必要)

<保証割合>
融資額の全額を保証(100%)
※無担保8千万円、最大で2億8千万円
※一般保証と別枠で、セーフティネット保証4号と合わせて最大5億6,000万円

<保証利率>
信用保証協会所定

職場適応訓練費

激甚な災害を受けた地域において就業していて、災害により離職を余儀なくされた人などであって、再就職を容易にするため職場適応訓練を受けることが適当であると公共職業安定所長が認める者を、次の(イ)~(ホ)に該当する事業主に委託して行います。

<委託事業部主>
(イ)職場適応訓練を行う設備があること
(ロ)指導員としての適当な従業員がいること
(ハ)労働者災害補償保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険等に加入し、又はこれらと同様の職員共済制度を保有していること
(ニ)労働基準法及び労働安全衛生法の規定する安全衛生その他の作業条件が整備されていること
(ホ)職場適応訓練修了後、引き続き職場適応訓練を受けた者を雇用する見込みがあること

<訓練費>
・事業主に対して職場適応訓練生1人につき24,000円/月(重度の障害者25,000円/月)を支給
・短期の職場適応訓練については960円/日(重度の障害者1,000円/日)を支給

<訓練期間>
・6ヵ月(中小企業及び重度の障害者に係る訓練は1年)以内
・短期の職場適応訓練については、2週間(重度の障害者に係る訓練は4週間)以内

来たる自然災害に備える、中小企業の取組み

繰り返しになりますが、自然災害への備えはそれぞれの中小企業が普段から行う必要があります。

具体的にはまず、リスクの把握です。ひと口に自然災害といっても、地震、水害、土砂災害など、その種類は多岐にわたります。自社がどの自然災害のリスクをどの程度抱えているかを知らなければ始まりません。

そのために役立つのが、各自治体が公表しているハザードマップです。ハザードマップにはそれぞれの地域における豪雨発生時の浸水リスクや地震発生時の土砂災害リスクなどがまとめられています。

そうした情報をもとに自社の自然災害リスクを把握し、ソフト、ハード両面から対策を考えます。

ソフト面の対策としては、従業員の安否確認に関するルールの策定、従業員への避難経路や避難場所の周知、水・食料・災害用品などの備蓄、水災を保証する損害保険への加入などが挙げられます。

ハード面の対策としては、建屋や機械設備の耐震・免震化、耐震のための固定の実施、事業継続に必要な情報のバックアップ対策、非常用発電機などの停電に備えた機器の導入、さらには安全な地域への立地の変更などが挙げられます。

 

これからの時代、何らかの自然災害の発生は不可避と考えておいたほうがいいでしょう。日頃からの準備が被災後の経営の立て直しを左右します。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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