「過少資本」の企業が倒産に追い込まれる理由

信用調査機関の調査によると、2018年に倒産した企業の数は8,000件以上でした。業種別でみるとサービス業が最も多く、卸売業、建設業が後に続いています。また、「倒産した企業の平均寿命は23.9年」という数値もこちらの調査で導き出されています。

リーマンショックが起きた2008年(倒産企業数1万3,000件以上)以降、倒産企業数は10年連続で減少しています。しかし回復傾向にあるものの、楽観はできない状況です。

本連載では企業の倒産原因に注目し、企業が存続し続けるためのポイントを紹介していきます。今回は、倒産原因でも5本の指に入る「過少資本」について考えていきます。

資本金=会社の運転資金

資本金とは株式会社の創業時に、株主が会社に出資した運転資金(=自己資本)のことを指します。新規事業を立ち上げる際に調達した資金も資本金に分類されます。

「資本金の額が大きい企業ほど大企業である」というイメージを抱きがちですが、実際のところは初期費用のかさむ業種(メーカーや建設業など)ほど資本金は高くなる傾向にあります。創業後に経営が傾いたとしても、過去の資本金額は変わらず掲示し続けられるわけですから「企業規模を計る」という意味ではあくまで目安のひとつにすぎません。

以前は、株式会社を設立するためには最低1,000万円、有限会社を設立するには最低300万円という「最低資本金制度」が存在していましたが、2006年に撤廃されました。これにより資本力がなくても斬新な発想で事業を展開できるようになり、数多くの起業家が成功を収めています。

過少資本で倒産する理由

資本金は返済の義務がない自己資本を意味しているため、会社にとって非常に重要なものです。いまは資本金1円からでも会社が始められる時代ではありますが、資本金が脆弱ということは貯金もないままにその日暮らしを続けているようなものであり、倒産しやすい状況であることは確かです。

また創業後、利益が上がっているにもかかわらず、節税目的で自己資本比率を低いままに保とうとする企業もあります。経営者は税金を逃れたいあまり、利益を社外流出させようと躍起になりますが、やはり不測の事態が生じた際、対応しきれず倒産へと追い込まれてしまうのです。

なお中小企業庁が毎月発表している「倒産の状況」によると、2019年に過少資本で倒産した企業の数は337社でした。5年前に比べ緩やかな減少傾向にありますが、資本力の少なさを自覚している企業の経営者は注意が必要です。

過少資本による倒産を避けるための対策

過少資本による倒産を避けるために、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

■堅実な経営を心がける

まず心がけなくてはならないのが、堅実な経営です。少ない資本金からスタートしたベンチャーの中小企業はフットワークが軽く、新しいビジネスチャンスにも敏感です。新規事業に手を広げ、営業規模拡大に乗り出すケースが多くあります。

もちろんうまくいけば問題はないのですが、資本力の低い企業は資金回収の目算が一度崩れてしまうだけで、倒産へ追い込まれるリスクを常に抱えています。わずかな誤算で「黒字倒産」となってしまうベンチャー企業も多数存在しています。「地固めがまだ不十分」という自覚があるようなら、分不相応な事業拡大には手を出さず、堅実な経営を心がけるようにしましょう。

資本金は前述の通り、会社の創業時に保有していた現金です。現在の経理状況を常に把握し、負債が純資産を超過していないか目を光らせておくことも経営者の重要な役目です。

■投資に走り過ぎない

資本力の低い企業の経営者は、自分の会社の規模が小さいことをよく知っています。そのため一定の利益が上がると「企業をもっと大きくするために」という名目で、思い切った投資を選択することが多いようです。また「みすみす税金に持っていかれてたまるか」という思いが、投資の背後にあるケースもあるようです。

しかし、過少資本という前提がある場合は、『利益の内部留保』を優先事項のひとつと捉えなくてはなりません。自転車操業を続けていると、企業の体力は衰えていく一方です。もちろん、次の利益に繋がる設備投資は良い節税対策ともなってくれますが、いざという時に手元にあるお金の存在は、安心感を持って冷静に経営を行うためにも非常に重要です。投資に走るあまり倒産という結果を招くようでは本末転倒であると、理解しておいてください。

■信用性のキープに努める

資本金の額は会社の信用度を計るひとつの目安になります。多額である必要はありませんが、中小企業であれば少なくとも100万円台を掲示できるようでないと、取引先として信用できないと判断されてしまう場合があります。

また、「資金繰り」は大企業であっても取り組んでいる課題です。特に注意したいのは、借入れのタイミングです。資本力の低い企業は不測の事態に見舞われた際、当座をしのぐために早急な借入れを希望するケースが多くなっています。銀行や政府系金融機関は審査に時間がかかるため、ノンバンク系を優先することとなりますが、こうした借入れ実績は会社の信用情報に記録され、次回の借入れの際に悪影響を及ぼします。

「最悪の場合は借りれば良い」という考え方は捨て、利益の内部留保を優先する考え方にシフトチェンジしていくことが大切です。「必要以上に借り入れを恐れているようでは成長もない」という意見もありますが、返済が滞るような事態は絶対に避けなくてはなりません。債務超過による倒産に陥ることの無いよう、経営状態が良好なうちから不測の事態に備えておきましょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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