東南アジア「デカコーン」舞台にソフトバンク・Google陣営が火花

※百計オンラインの過去記事(2019/05/09公開)より転載

経済成長著しい東南アジアを舞台に覇権を争うスタートアップ2社、「Grab(グラブ)」と「Gojek(ゴジェック)」をご存知でしょうか。東南アジアに縁のない日本人は耳にしたこともないであろうこの2社がいま、世界の名だたるベンチャーファンドから熱視線を集めています。

中でも、両社への関与を強めているのが、ソフトバンクとGoogleの二大巨頭です。東南アジアを舞台に、「デカコーン」2社が火花を散らす戦いの行方に注目です。

東南アジアを舞台に火花散らす2社、実は創業者はハーバード同級生

「デカコーン」とは、将来有望な未上場のベンチャー企業のうち、株式評価額(時価総額)が100億ドル以上と評価される企業を指します。先日、Gojekがインドネシア初のデカコーン企業となり話題を集めました。
このGrabとGojekは、どちらも配車アプリと呼ばれるサービスを展開しています。米国発のUber(ウーバー)やLyft(リフト)のように、スマホアプリで自家用車や二輪車による配車サービスを提供してしてます。ただ、インドネシア発のGojekは、同国の主要交通手段であるバイクタクシーに強みを持っています。

現在、Grabはシンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、カンボジアの8ヶ国、Gojekはインドネシア、シンガポール、タイ、ベトナムの4ヶ国でサービスを展開しています。

東南アジアを舞台にしのぎをけずるこの2社は、非常に似通った成り立ちをしています。まず、配車サービスという同じフィールドで戦っていること、そして、創業者同士がハーバードビジネススクールの同級生であるということです。2人は学生時代、よく食事を共にしていたといいます。

Grabの創業者、アンソニー・タン氏(37)はマレーシア生まれ。タンチョン・モーターズというマレーシアで日産車の独占製造・販売を手掛ける有力企業の創業者一族に生まれました。数年前から本拠地をマレーシアからシンガポールに移し、先ごろシンガポールでの本社ビル設立を発表しました。

一方、Gojek創業者のナディム・マカリム氏(34)はシンガポール生まれのインドネシア国籍。著名な弁護士の息子として生まれ、米国ブラウン大学卒業後マッキンゼーに入社。ハーバードでMBAを修めたのち、アパレル通販のザロラ・インドネシアを立ち上げ、Gojekを創業しました。

両社は、創業の動機も似ている。アンソニー・タン氏はインタビューで、「マレーシアのタクシーを安全に使える乗り物にしたかった」と語っています。また、ナディム氏もインドネシア庶民の足であるバイクタクシーを明朗会計で組織的な交通手段に変えました。

ソフトバンク・Google陣営の代理戦争に

テクノロジーの力によって、旧態依然とした東南アジアの交通サービスを生まれ変わらせる2社には、世界中の投資家が熱視線を送ります。
まず、Grabの配車事業を後援するのは、ソフトバンクの「ビジョンファンド」傘下の配車サービス企業です。東南アジア事業をGrabに移譲して撤退したUberや、中国の同業・滴滴出行も出資しています。

また、トヨタやホンダ、ヤマハといった日本の自動車・二輪メーカーも、東南アジアでのモビリティーサービスでのプレゼンス拡大を目指して参画しました。ネット決済は、クレディセゾンや東京センチュリーが支援します。先日は、アンソニー・タン氏とソフトバンクの孫氏が会合し、孫氏はGrabに対して「無限の支援」を約束したといいます。

一方、Gojekのバックに就くのは米Googleに中国のIT大手中国騰訊控股(テンセント)、通販大手の京東商城(JD)。三菱商事も株を取得しています。
もはや、東南アジアを舞台にしたIT系巨人の代理戦争という趣です。

配車の枠を超えライフスタイル全般に根差したサービスに

巨額の資金援助を得た2社は、配車サービスの枠を超えて、さらに業域を拡大しています。料理の配達サービスから、電子決済事業、バイク便サービスなど、2社はいまや、東南アジアの人々のライフスタイル全般に根差したサービスになりつつあります。
ここでも両社は切磋琢磨しています。片方が新サービスを発表すれば、追ってもう一社も参入するといった具合です。

世界経済将来を担う東南アジアのデジタル産業の未来は、ミレニアル世代の創業者が率いる「Grab」と「Gojek」の今後にかかっているといっても過言ではないでしょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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