経営者にいまおすすめの6冊 「発想力を高める」編

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目次

社会構造の変化やテクノロジーの発展、未曽有の感染症の蔓延など、変化の激しい現代においては、過去の慣例にとらわれない柔軟な「発想力」が必要とされています。発想力は、新たな商品やサービスの企画、クリエイティブの創造などだけでなく、経営における問題解決や業務改善にも役に立つスキルです。そこで今回は、発想力を鍛えるためにおすすめの6冊を紹介します。

『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』

アダム・グラント著、楠木建監訳 三笠書房 2,200円(税込)

THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す

「再考」をキーワードに固定された考えを見直し、発想力をみがく

タイトルの『THINK AGAIN』は「再考」を意味し、本書では主なメッセージとして「考えること」より「考え直す」ことが重要である、と語られています。本書の著者で組織心理学者のアダム・グラント氏は、自身の研究に基づく科学的証拠やさまざまな事例を列挙しながら、既存の考えを新たな観点から見つめ直すことがいかに大事かを読者に訴え、41カ国で翻訳された本書は、世界中でベストセラーになっています。

まずパート1では、「自らが新たな考えを受け入れること」に焦点を当てて解説します。私たちが考えたり話をしたりするとき、その思考様式は無意識に3つの職業の思考モードに切り替わるとグラント氏は分析します。具体的には、①自らの思想を他者に説教する「牧師」、②相手の過ちを指摘し非難する「検察官」、③広く支持されるためにロビー活動を行う「政治家」です。しかし、これらの思考に陥ると、自分の見解が間違っている可能性を見落とす危険があります。そこで我々がよりよい判断をするために持つべき思考は、物事をつねに客観的に捉え、仮説を立てて実験、検証を行う「科学者」モードであるとグラント氏は述べます。

一方で、「周囲の人に再考を促す方法」について掘り下げたのがパート2です。私たちは他者を説得するとき、つい敵対的なアプローチを取ってしまいがちです。しかし、それは相手の心を閉じさせ、かえって考えを堅固にさせるなど、逆効果となるケースが多いでしょう。グラント氏は、他者に心を開かせ、考えを変えてもらうために効果的なのは「穏やかな傾聴」であると考察し、その具体的な手法や応用例を紹介します。

さらに、再考は個人のみに求められるスキルではなく、集団組織が備えるべき能力であるとし、パート3で「学び続ける社会や共同体を創造する方法」に言及。最後のパート4では、再考は私たちの思考を自由にして、より満ち足りた人生を送るためのツールであると結論づけます。そしてグラント氏は、「人生プラン」を定期的に再考し、自分の現在の価値観や関心、スキルにうまく合うように日々の行動を修正することをすすめます。

エピローグは、あえて校正の跡を残したまま掲載されており、グラント氏が再考した思考回路を垣間見ることができます。400ページ以上のボリュームがある本書ですが、巻末に「再考スキルを磨くための30の秘訣」として主なポイントがまとめられていることで、要点が理解しやすい構成になっています。

『知的生産術』

出口治明著 日本実業出版社 1,650円(税込)

知的生産術

本当に知的生産性が高い働き方は、柔軟な発想力にある

著者は還暦でライフネット生命を創業し、立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務めた出口治明氏(2023年12月に退任)。イノベーションは「サボりたい」という気持ちから生まれる、との言葉からはじまる本書には、効率よく仕事をして成果を出すための「知的生産性が高い働き方」のコツが、軽妙な筆致でつづられています。

これまでの日本は製造業が主体であり、労働者が工場で長時間働くことで高度成長を実現してきました。しかし、人口が減少し、サービス産業が日本の産業構造の主軸になりつつある現代では、労働時間ではなく労働生産性が評価軸となり、斬新な発想やアイデアを生み出すことが求められます。ところが、そもそも自分の頭の中にさまざまな情報や知識がなければ、よいアイデアは浮かびません。柔軟な発想力を身につけるためには、たくさんの「人」と出会い、たくさん「本」を読み、たくさん「旅」をして(=現場に出ることで)、脳に刺激を与えることが重要であると出口氏は主張します。

日々の生活の中で「人・本・旅」の時間を確保するためには、短い労働時間で仕事の成果を出す必要があります。そこで出口氏は、自身の経験から生まれた「知的生産性を高める5つの視点」を紹介。これは、①「無減代」ー無限大をもじったもので、その仕事はなくせないか、減らせないか、代えられないかーを考えること、②誰も疑わないことでも「なぜ?」を繰り返し、腹落ちするまで深く考えること、③「枠」や「制約」の中で工夫すること、④成功体験ではなく「数字、ファクト、ロジック」といったエビデンスに基づいて考えること、⑤考えてもしかたがないことは考えない、というものです。出口氏自身のエピソードだけでなく、同僚や部下のインタビューも添えられることで、説得力のある内容になっています。

本書の終わりに出口氏は、日本人の価値観や人生観は職場や仕事に偏りすぎていると指摘。ベンチャー企業を10年間経営した結果を踏まえ、「3割のワーク(仕事)に集中し、7割のライフ(人生)を充実して過ごす社員が多ければ多いほど、企業は成長していく」と語ります。そのような考えのもとで執筆された本書には、出口氏の経営者としての仕事術だけでなく、人生を豊かにするためのさまざまなヒントが織り込まれています。

『メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問』

細谷功著 PHP研究所 957円(税込)

メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問

視点を変える思考術で、発想力を効果的に向上させる

メタ思考とは、「物事を一つ上の視点から客観的に考えること」を指し、物事の本質を捉え、アイデアを創出するために欠かせない能力です。本書はその重要性と具体的な思考法をわかりやすく解説。さらに掲載されている34の演習問題を解くことで、メタ思考を実践レベルに落とし込んで習得できます。

メタ思考は、「人間は自己矛盾の塊である」と気づくことからスタートします。ほとんどの人は、自分のことがよく見えていません。それを象徴するのが、年配者の「近頃の若い者は不甲斐ない」という言葉です。この発言は、自分の若いときのことは棚に上げ、その若い世代をつくったのは自分たちの世代だという自覚もないことから発せられており、まさに「非メタ思考の権化」といえます。

メタの視点を実践するための思考法には、「Why型思考」と、「アナロジー思考」の2つがあります。

「Why型思考」とは、「なぜ」を繰り返すことで、その背景にある上位の目的を考えることです。たとえば上司や顧客から、「ドローンについて調べて報告して」といわれたら、どのようなアクションをとるでしょうか。すぐに「インターネットで検索する」「関連書籍を買う」と答える人が多いかもしれません。しかし、いきなり問題を解き始めるのではなく、まず「なぜドローンについて調べる必要があるのか(Why)」を考えることが「Why型思考」です。

「アナロジー思考」は、個別の事象を抽象化して遠くのものとの共通点を探し出し、再度具現化することを意味します。たとえば「年賀状がたくさん届く人」はどんな人かと考えると、一部の有名人を除けば「たくさん年賀状を出す人」といえます。この事象をアナロジー思考で展開すると、「部下からの報告がこない」という上司は、「部下が報告してもリアクションを返していない」のかもしれませんし、「部下が自分の頭で考えない」という場合、「上司がいつも1人で決めてしまっている」という可能性が浮上します。

著者はビジネスコンサルタントで、『地頭力を鍛える』などのベストセラーで知られる細谷功氏。細谷氏は、メタ思考は今後どれほどAIが発達しても、人間が働く上で不可欠な「永遠に不滅のスキル」であると述べています。

『直感で発想 論理で検証 哲学で跳躍 経営の知的思考』

伊丹敬之著 東洋経済新報社 1,760円(税込)

直感で発想 論理で検証 哲学で跳躍 経営の知的思考

経営者は、大きなものから小さなものまで、さまざまな決断を下さなければならない。決断に至るまでに必要なのは、本書のタイトルにある通り「直感で発想し、論理でその発想を検証し、検証した後に哲学で跳躍をする」という発想力を含めたステップだ。経営学の第一人者である著者が、経営における知的思考の本質を解き明かす。

『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』

高松智史著 実業之日本社 1,760円(税込)

「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術

元戦略コンサルタントの著者が、正解がないビジネスの現場、ひいては人生において、後悔のない選択をするために「深く面白く」考える発想力の技術を伝授。「桃太郎」などのなじみ深いストーリーや事例を出しながら、平易な文章で表現されている。各章ごとに内容をまとめた漫画も掲載。

『解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法』

馬田隆明著 英治出版 2,420円(税込)

解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法

「解像度」は、もともと画像や映像の鮮明さを表した言葉だが、現在は物事の理解度や精細さ、思考の明晰さを示す言葉としても用いられている。著者は優れた起業家は「解像度が高い」人であると考え、彼らの思考法や行動パターンをもとに、ビジネスパーソンが解像度を上げ、発想力を進化させるコツを解説する。

[編集] 一般社団法人100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]東洋経済新報社ブランドスタジオ

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