オフィスビルで保育所を開業するメリット

※百計オンラインの過去記事(2018/07/20公開)より転載

働く女性を取り巻く環境はまだまだ整っていません。国立社会保障・人口問題研究所による「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によると、第1子出産前後に退職する女性は46.9%。働く女性の約半数が、出産を機に仕事を継続しないという選択をしているということです。その原因の一つとして、子どもの預け先が不足している現状が挙げられるでしょう。この状況を打破しようと、国は企業内保育所や企業主導型保育所の設立を推進しています。

ライフステージが変わっても活躍できる企業に

2017年10月時点の待機児童は、3歳未満を含めると全国で5万5,433人でした。子どもを預けて働きたいと願っても、都市部の保育所激戦区においては難しいことが多いです。

特に待機児童が問題となっている東京都では、保育所を増やしたくとも建設できる土地がなく、土地が見つかっても地域住民に反対されてしまうといった問題もあります。そのような中で、オフィスビル内に保育所を開設する企業もでてきました。東京都の福祉保健局が2017年に発表した「都内の保育サービスの状況について」によりますと、2015年の時点で96だった事業内保育所は、2017年4月には420に増加しました。徐々にではありますが、育児中でも安心して働ける仕組みづくりを進めている企業が増えていることがわかります。

オフィスに保育所を開設することで、育児と仕事の両立に不安を抱える従業員も安心して業務に取り組めるでしょう。子どもに何かあってもすぐに駆けつけられる、保育園への送迎時間が短縮できるのも大きなメリットです。

オフィスビルの保育所が地域貢献に

このような企業内保育所や企業主導型保育所のメリットは社員だけにもたらされるものではありません。企業内保育所に「地域枠」を作り、地域住民から子どもを受け入れている企業もあります。また、空き室対策として企業が保育所を開設し、待機児童解消に貢献している企業もでてきました。地域と連携しつつ企業が率先して保育所を開設することで、地域住民からの企業イメージ向上を図ることもできます。

特に待機児童が多い都市部においては、こういった企業の動きによって、社員だけではなく多くの「働きたい女性」の助けになるでしょう。企業主導型保育所に入所している子どもは待機児童のカウント外となるため、自治体にとっても待機児童数が少なくなるというメリットがあります。

企業主導型の保育所には助成金もある

企業主導型保育所を開設したくとも資金面に不安がある中小企業は、助成金で負担を軽減できることを知っておきたいです。この助成金を利用することにより、保育所の運営費や整備費について認可施設と同等の助成が受けられるようになります。企業主導型保育所は認可外保育所です。しかし、助成金を利用することで、親は認可保育所と同等の保育料で子どもを預けられるようになります。

この助成金は他企業との共同利用や地域住民の子どもを受け入れていても利用できるため、資金面に不安のある企業は他企業と連携し保育所を開設してもいいでしょう。

企業主導型保育所に対する助成の内容

「企業主導型保育事業助成金」を受けられるのは、子ども・子育て拠出金を負担している事業者が、事業所内に保育施設を設置し企業主導型保育事業を実施する場合などに限られます。助成金は施設整備費と運営費に対し支払われ、助成金の額は受け入れ児童の年齢や人数、保育士比率、施設の準備・整備方法によって基本額が決められています。

さらに、延長保育、病児保育、夜間保育を行う事業者や、病児保育スペース、一時預かりスペースなどを実施する事業者に対しては基本額に加算された助成金が支払われます。

自社所有オフィスの利用で柔軟な企業体制を

このように、オフィス内保育所は、企業、従業員、地域住民それぞれにメリットがあります。国からの助成金を利用することで、コストをかけずに保育所が開設できるのも魅力です。何より、オフィス内保育所は現従業員の不安解消に役立つばかりではなく、元従業員の復職も推進できます。人口減少によってますます難しくなるだろう人材確保にも一役買うに違いありません。時代の変化に合わせた柔軟な企業体制をとるためにも、オフィスは自社所有にしておきたいところです。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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