「過少資本」の企業が倒産に追い込まれる理由~20年で終わる会社と生き残る長寿企業[第3回]

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※過去の記事(2020/03/18公開)のデータをアップデートしたものです。

大手信用調査機関の調査によると、2021年に倒産した企業の数は6,000件あまりでした。業種別でみるとサービス業が最も多く、建設業、卸売業が後に続いています。また、倒産した企業の寿命ついては、最も長いのが製造業の36.3年、最も短いのが金融・保険業と情報通信業の15.7年でした。業種別にみるとその差が20年以上あるものの、平均寿命は23.8年という数値も導き出されています。

リーマンショックが起きた2008年(倒産企業数1万3,000件以上)以降、倒産企業数は13年連続で減少しています。しかし、2020年以降は、コロナ禍の厳しい状況を支えるための各種支援策による影響もあるとみられます。したがって回復傾向にあるものの、楽観はできない状況です。

同調査では業歴が判明した5,000件あまりについて、業歴10年未満の企業と業歴30年以上の企業の倒産件数を比較分析した結果も示されています。倒産件数に占める業歴10年未満の企業の構成比は26.5%であるのに対し、業歴30年以上の企業の構成比は33.8%と2年連続で上昇し、外部環境の変化に対応できていない状況がうかがえます。長寿企業といえども、これまでの成功体験にこだわっていては、今後は生き残ることが難しいといえるでしょう。

本連載では企業の倒産原因に注目し、変化に強い長寿企業となるためのヒントを探してしていきます。今回は、倒産原因のひとつ「過少資本」について考えます。

資本金=会社の運転資金

資本金とは会社の設立時でいうと、創業者が自ら供出した資金のみならず、株主、投資家などから出資を受けた分を足し合わせた資金(=自己資本)のことを指します。その後、新規事業を立ち上げる際に調達した資金なども資本金に分類されます。つまり、資本金とは、過去に出資を受けた額の合計金額です。

「資本金の額が大きいほど大企業である」というイメージを抱きがちですが、実際のところは初期費用のかさむ業種(メーカーや建設業など)ほど資本金は高くなる傾向にあります。創業後に経営が傾いたとしても、過去の資本金額は変わらず掲示し続けられるわけですから「企業規模を計る」という意味ではあくまで目安のひとつにすぎません。資本金は、会社の売上高や業績と直結するのではなく、別のものとして扱われるのです。

以前は、株式会社を設立するためには最低1,000万円、有限会社を設立するには最低300万円という「最低資本金制度」が存在していましたが、2005年の法改正により撤廃されました。「最低資本金制度」は、会社の債権者など利害関係者の保護を主たる目的としたものでした。しかし、業種や事業内容にかかわらず画一的に適用されるものであったことから、起業を阻害しているとの批判もありました。「最低資本金制度」の撤廃により資本力がなくても新たな事業を展開できるようになり、数多くの起業家が成功を収めています。

過少資本で倒産する理由

資本金は返済の義務がない自己資本を意味しているため、設立時の運転資金になるだけでなく、事業を円滑に進めるにあたって会社にとって非常に重要なものです。いまは資本金1円からでも会社が始められる時代ではありますが、資本金が脆弱ということは、いわば貯金のないままにその日暮らしを続けているようなものといえます。資本金は企業の「体力」ともいわれ、体力のない会社が倒産しやすい状況にあることは確かです。

また創業後、利益が上がっているにもかかわらず、節税目的で自己資本比率を低いままに保とうとする企業もあります。経営者は租税を回避するために、利益を社外流出させようとしますが、手元に資金がなければ不測の事態が生じた際、対応しきれず倒産へと追い込まれてしまうのです。

なお中小企業庁が毎月発表している「倒産の状況」によると、2021年に過少資本が原因で倒産した企業の数は100社あまりでした。7年前から緩やかな減少傾向にありますが、依然として倒産理由のひとつであることに変わりはありません。経営者は過小資本にならないよう注意を払わなければなりません。

過少資本による倒産を避けるための対策

過少資本による倒産を避けるために、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

■堅実な経営を心がける

まず心がけなくてはならないのが、いうまでもなく堅実な経営です。少ない資本金からスタートしたベンチャーの中小企業はフットワークが軽く、新しいビジネスチャンスにも敏感です。新規事業に手を広げ、営業規模拡大に乗り出すケースが多くあります。

もちろんうまくいけば問題はないのですが、過少資本の企業は資金回収の目算が一度崩れてしまうだけで、倒産へ追い込まれるリスクを常に抱えています。特に「不確実性の時代」と称されるほど、経済や社会の状況が目まぐるしく変化する現在は、わずかな誤算で「黒字倒産」となってしまうベンチャー企業も多数存在しています。一方で長寿企業では「身の丈経営」を徹底する企業が少なくありません。情報収集が不十分で競合他社の状況や自社の競争優位性が不明である場合には、分不相応な事業拡大には手を出さず、堅実な経営を心がけるようにしましょう。

資本金は前述の通り、過去に出資を受けた額の合計金額です。現在の経理状況を常に把握し、負債が純資産(=自己資本)を超過していないか目を光らせておくことも経営者の重要な役目です。

■投資に走り過ぎない

資本力の低い企業の経営者は、自分の会社の規模が小さいことをよく知っています。そのため一定の利益が上がると「企業をもっと大きくするために」という名目で、思い切った投資を選択することが多いようです。また「せっかく利益が上がったのだから納税より自らの事業拡大に繋がることに使いたい」という思いが、投資の背後にあるケースもあるようです。

しかし、過少資本という前提がある場合は、「利益の内部留保』を優先事項のひとつと捉えなくてはなりません。資本金が少ないと不測の事態が起きたときに自転車操業のような状態に陥り、あったという間に企業の体力が衰えてしまいます。もちろん、設備投資は計画的に進めればよい結果にも繋がりますが、いざという時に手元にあるお金の存在は安心感をもたらしてくれます。冷静な経営判断を行うためにも、資本力は非常に重要です。事業を拡大してより利益を上げたいという感情に支配されて、無理な投資に走り倒産という結果を招くようでは本末転倒であるといえるでしょう。

会社の信用度を保つ

資本金の額は会社の社会的な信用度を計るひとつの目安になります。新たな取引先を選定する場合に、候補先の資本金を確認してから決定する企業もあります。多ければよいというものではありませんが、一定の資本金があれば経営が安定しているとみなされやすいことも事実です。対して、事業内容と規模にみあった資本金がなければ、取引先として信用できないと判断されてしまう場合があります。

資本金の額は、企業間の取引に限らず、金融機関や投資家からの信用度にも直結します。過少資本は、会社の資産そのものが少ない状態を意味するため、債務超過に陥る危険性があるからです。債務超過に陥ると金融機関や投資家から敬遠され、融資を受けることが難しくなります。逆に、資本金の額が多ければ信用度が高まり、資金調達がしやすくなるのです。

「資金繰り」は大企業や長寿企業であっても取り組んでいる課題です。特に注意したいのは、借入れのタイミングです。資本力の低い企業は不測の事態に見舞われた際、当座をしのぐために早急な借入れを希望するケースがあります。銀行や政府系金融機関は審査に時間がかかるため、ノンバンク系が候補になりますが、こうした借入れ実績は会社の信用情報に記録され、次回の借入れの際に悪影響を及ぼします。

「いざというときには借りれば良い」という考え方は捨て、利益の内部留保を優先する考え方にシフトチェンジしていくことが大切です。「必要以上に借り入れを恐れているようでは成長もない」という見方もできますが、返済が滞るような事態は絶対に避けなくてはなりません。過少資本が原因で債務超過に陥り、ついには倒産という事態を招くことの無いよう、経営状態が良好なうちから不測の事態に備えておきましょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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