2022年・2023年・2025年・2048年。こんなにある、不動産の20○○年問題

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記事公開日:2020/06/24    最終更新日:2023/02/03

ある年や日付が到来すると話題になる「〇〇問題」は社会や日常生活などに深刻な影響を与えます。かつて情報システムにおける2000年問題が騒がれてから、同様のキーワードをよく見かけるようになりました。不動産の分野にもいくつかの「○○年問題」があるのをご存じでしょうか。

生産緑地が宅地になる――2022年問題

まずは2022年問題(生産緑地問題)があります。生産緑地とは、都市における良好な環境を確保するため、計画的に保存された農地のことです。この生産緑地が2022年、宅地化して市場に流通し、宅地の地価が下落するのではないかといわれています。

ことの発端はバブル期にさかのぼります。バブルによる地価高騰に対する施策として政府は、1992年、農地への固定資産税の課税を強めました。これにより農家が農地を手放し、都市近郊の農地は多くが宅地になり、たくさんの人が宅地を取得できました。一方で政府は、農業を続けたいという農家に対して、30年間は農地のままにすることを条件に、固定資産税を軽減できる仕組みを提供しました。

こうして都市部に残った農地が生産緑地です。国土交通省の「平成28年都市計画現況調査」によれば、全国の生産緑地は1万3,187ヘクタールあります。そして、この生産緑地の多くは1992年に指定されたもので、それらが30年の縛りから順次解放されるのが2022年なのです。

生産緑地は30年の期限を迎えた時、自治体に買い取ってもらえる仕組みになっています。多くの農家が生産緑地の買い取りを申し出て、宅地が一気に供給されれば、地価に対して下落圧力となるはずです。しかし実際は、そうはならないという見方もあります。

理由としては、東京都産業労働局農林水産部が行ったアンケート調査において、30年での買い取りを希望する農家が約8%と限られていたことが挙げられます。また、都市部には生産緑地以外の農地(宅地化農地)も、生産緑地の面積以上に残されています。つまり、すでに都市部には使われていない土地がたくさんあるということです。

2022年問題に影響があるのは?

以上のことから、生産緑地が宅地化される面積は限定的であり、もし宅地化されたとしても、全体として見れば不動産価格にはそれほど大きな影響がないだろうと考えられます。

都内の地価

東京都財務局が公表している地価公示価格(東京都分)によると、2022年の東京都全域における住宅地の平均価格は1平米あたり43万7,700円で、商業地では1平米あたり256万2,600円です。
住宅地のトップ3は、千代田区(270万4,300円)、港区(207万6,700円)、渋谷区(133万4,900円)となり、商業地のトップ3は中央区(903万4,500円)、渋谷区(707万8,200円)、千代田区(627万4,800円)という結果でした。

実際に2022年の不動産の動きは?

2017年、政府によって生産緑地に対する税優遇(固定資産税や相続税など)を10年ごとに更新できる「特定生産緑地」が制定され、翌2018年より施行されました。国土交通省の調査(2022年6月末時点)によると2022年に生産緑地としての期限が切れる9,382ヘクタールの内、特定生産緑地へ指定済が49%、指定受付済が39%、指定の意向ありが1%で、合計すると89%が農地として継続されることになりました。

結果として、生産緑地が宅地化されて大量に市場へと流通することはなく、都市部の宅地価格が大幅に下落することもありませんでした。

生産緑地問題による影響がほとんどなかったこともあり、2022年の公示地価において、全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じ、工業地においては6年連続の上昇となりました。2014年頃からのマンション価格の上昇も続いています。

このような状況の中、年末に日本銀行が金融緩和政策の方針を変更して、長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大しました。事実上の利上げへ舵を切ったのです。2023年1月には多くの金融機関が固定金利を引き上げています。今後、不動産の価格へも影響が及ぶのか注視していく必要があります。

人口だけでなく世帯数が減少――2023年問題①

すでに人口減少が始まっている日本ですが、核家族化や高齢者の独居率の上昇を背景に世帯数はまだ増加しています。しかし、それも時間の問題です。国立社会保障・人口問題研究所が2018年に発表した「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によれば、日本の世帯総数は2023年に5,419万世帯でピークを迎え、減少が開始するといいます。

世帯数が減少すれば、不動産市場にどのような影響が出るのでしょうか。単純に考えれば、住宅需要が減ることにより価格の下落圧力になるでしょう。人口減少が進む日本において、不動産価格の下落は避けては通れない道といえるでしょう。

しかし、都市圏から見れば事情は少し異なります。たとえば、東京の人口は、2025年に1,398万人でピークを迎え、以後減少すると予測されています(東京都の統計より)。また、世帯数は、2030年の708万世帯まで増加し、その後は減少に転じますが、それでも2035年708万世帯、2040年699万世帯、2045年687万世帯と、減少度合いは緩やかです。

2023年問題①で影響があるのは?

つまり、2023年問題は確かに全国の不動産市場に影響を与えますが、都心に限っていえば影響は限定的、ということです。これから不動産を買う場合は、都市部を狙うのが得策といえるでしょう。

大規模オフィスの大量供給――2023年問題②

大規模オフィスが竣工

2023年の大規模オフィスの供給量は130万平米を超える見通しです。これは21年が61万平米、22年が49万平米だったのと比べてみると2倍以上の供給量となり、直近の10年を振り返ってみても、一番多かった20年の185万平米、2番目に多かった18年の147万平米に次ぐ、3番目となります。

新型コロナウイルス感染症の拡大にともなって、最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月、政府より「出勤者数の7割減」が目標として掲げられ、在宅勤務・テレワークの導入が求められました。オフィスの移転や縮小を検討する企業も現れましたが、東京都心5区のオフィスの平均空室率が5%を超えたのは翌年の2021年でした。

2022年に入っても空室率は上昇し、6%台で推移していました。そのような中での2023年の大規模オフィスの大量供給は、都心オフィスの供給過多を招き、さらなる空室率の上昇とオフィスの平均賃料の下落を予感させます。

数年前、新築大型ビルであれば、完成前に全テナントが決まっていた状況とは打って変わって、今後は、テナント獲得のために、フロアを分割しての契約や一定期間の賃料が無料となるフリーレント、内装費等の初期費用を負担するなど、貸し手にとっては厳しい状況が数年は続くとの見通しもあります。

2023年問題②で影響があるのは?

大規模オフィスの大量供給によって、周辺にある既存ビルの空室率上昇や賃料の下落が予想されます。貸し手にとっては、死活問題となる一方で、オフィス移転を考えている企業にとっては追い風となり、条件面でも交渉がしやすい状況といえるでしょう。

2023年に竣工予定の大規模オフィスビルの一部

・東宝日比谷プロムナードビル(千代田区)
・麻布台ヒルズ(港区)
・虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(港区)
・東京三田再開発プロジェクト オフィスタワー(港区)
・田町タワー(港区)
・渋谷桜丘プロジェクト(渋谷区)
・五反田計画(品川区)

少子高齢化による地価の変動――2025年問題

2025年には「団塊の世代」といわれる1947~49年に生まれた約806万人が後期高齢者(75歳以上)になります。少子高齢化が加速する、これは相続の件数が増加することも意味しています。国土交通省の「令和元年空き家所有者実態調査 報告書」によると、空き家の取得方法は相続が最も多く54.6%です。2021年に13.6%だった空き家率は今後、加速度的に上昇するといわれていて、10年後の2033年には空き家率が30%に達するとの予想も出ています。

このように2025年以降は相続を原因とした住宅の過剰供給と買い手の減少によって、不動産価格や地価の下落が引き起こされる可能性があります。特に人口減少が著しく進んでいる地方においては、避けられない問題となります。

しかし、2025年になった途端に急激に不動産価格や地価の下落が起きるわけではなく、そこを境にじわりじわりと進行していくと考えられます。当事者となる可能性がある場合は、コミュニケーションを密にして、まずはどのような選択肢があるのかを確認することから始めるとよいでしょう。

南極条約終了――2048年問題

最後に日本から離れて、世界の不動産に影響を与えるかもしれない「2048年問題」を紹介します。1959年、南極の平和的利用を定めた南極条約が発効され、1998年には南極の環境と生態系を包括的に保護することを目的として「南極条約議定書」が締結されました。

この条約によって、どの国も南極の領有権を主張できないことになっています。この南極条約議定書が見直しの期限を迎えるのが2048年です。

2048年問題に影響があるのは?

では、実際に2048年が来たらどうなるのでしょうか。まだ具体的な動きは出ていないため、どうなるかを予測するのは難しいです。もしかしたら、南極大陸の不動産を取引できるようになるかもしれません。

Facebookが北極圏の近くにデータセンターを建設した例もあり、南極大陸も同様の目的で利用価値はあるでしょう。世界の不動産市場に興味ある方は、南極条約の今後の動向に注目してみるのも面白いかもしれません。

これからの不動産の動きに対して行っておくべきこととは?

これからの不動産の動きを考えるうえで、重要なのは、やはり常にアンテナを張り続けることです。現代では、新聞や書籍、テレビ、ネット、セミナー等さまざまな情報源がありますが、それぞれの特徴を把握し、なるべく偏りがないようにするよう心がけるとよいでしょう。

また、国土交通省等が進めている施策のなかで、不動産に関する情報を収集するのも有益となると思われます。本コラムでいえば、生産緑地問題は国土交通省(当時は建設省)が制定した施策に起因するので、リアルタイムで情報を確認できていれば、その後の展開が読みやすかったのかもしれません。

直近でいえば、国土交通省がガイドラインを作成し、ルール整備を進めている「不動産ID」が、今後どのように展開していくのか、どこまで浸透していくのかにも注目したいところです。

まとめ

世界的な危機となったリーマンショックや新型コロナウイルス感染症等、または日本独自の事情による問題によっても、不動産は影響を受け、そのたびに価値は変化します。いずれにせよ何が問題なのか、その背景に迫ることで本質を理解できれば、必要以上に恐れることも少なくなるはずです。

不動産の動きを、歴史的・学術的な知識と結びつけて紐解いていけば、さらに深みが増すことでしょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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